医療現場からの提言

2017年

vol.10 猫背と体のバランス

知人から「姿勢が悪い」と指摘されました。猫背を自覚しています。猫背の弊害や治し方を教えてください。

穴澤:

ヒトの背骨は二本足で起立、歩行するために、首:頸椎(けいつい)では前方凸のカーブ(前わん)、背中:胸椎は後方凸のカーブ(後わん)、そして腰:腰椎は前わんカーブを描いています。そして、この三つの生理的湾曲がバネのように作用して、重い頭部の荷重を背骨の各部位に分散し背骨全体で支えています。

首、背中、腰のカーブはそれぞれ独立して存在するのではなく、互いに影響し合っているので、猫背、すなわち背中の後わんが強くなると、頭部の位置は前方に移動するため首を支える筋肉が緊張し、肩こりなどの原因となりえます。

なぜ猫背になるのでしょうか?

穴澤:

猫背の原因としては、動的な原因と構築学的な原因に分けられます。若年者によく見られる姿勢に気を付ければ改善する猫背は、筋肉、姿勢の問題で、動的な原因になります。高齢者によく見られる胸椎の変形、圧迫骨折による骨の変形が原因な場合は、姿勢に気を付けても改善はしないため、構築学的な原因と考えられます。

特に構築学的な問題により猫背が元に戻らない状態を円背ともいいます。猫背、すなわち胸椎の後わんが進行すると残りのカーブも大きくなり、最終的に、他の二つのカーブとのバランスが崩れると、いわゆる体にゆがみが生じた状態となります。

この状態では腰痛、背部痛が起きやすくなり、さらには骨盤の傾斜も変化し、股関節にも影響が生じる可能性があります。

高齢になってからの改善は難しいようです。猫背にならないように日頃から気を付けた方がよいですね。

穴澤:

猫背は人体を横から見た湾曲ですが、前方から見て側方に湾曲が生じる場合もあります。代表的な物に、女児に生じやすい特発性側わん症と高齢者の脊椎の変性に伴って生じる変性側わんがあります。

高齢者の猫背や側わんでは、筋力の低下や骨粗しょう症による脊椎変形、圧迫骨折により変形が進行することにより症状が悪化し、最悪の場合、下肢のしびれ、痛みなどの神経症状が生じて手術が必要となる場合もあるので、適度な筋力トレーニングおよび骨粗しょう症の予防治療が重要と考えられます。

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