医療現場からの提言

2016年

vol.11 安易なサプリ使用控えて

不規則な生活で食生活も乱れ、食事に偏りがあることを自覚しています。足りないと思う栄養はサプリメントを飲んでいますが、大丈夫でしょうか。

宍倉:

世界で最初のサプリメント(栄養補助食品)は、今から約80年前アメリカで生まれました。当時の都市生活者を調査し、不足している栄養素を補うことを目的として作られたのです。その後、食生活の変遷に伴い内容は変化してきましたが、「不足した栄養素を補う」という目的は変わっていません。「補う」ことを英語でサプライ(supply)といいますが、サプリメントは「補うもの」という意味なのです。

昔はビタミン等、栄養素不足が原因となる深刻な病気が多くありました。最も有名なのはビタミンB1が不足して発症する「脚気(かっけ)」です。それ以外にも、ビタミンC不足が原因で出血や免疫不全になる「壊血病」や、ビタミンDが不足し骨形成が障害される「くる病」などが有名な病気です。

しかし現在の日本では通常の食事を摂っている限り、これらのビタミン不足が原因の病気は発生しません。逆に、過剰なカロリーや塩分摂取が原因となる「成人病」が大きな問題となっています。

現在日本でも数多くのサプリメントが販売されており、それぞれに含まれている成分と期待される効能がうたわれています。しかし、現在の日本では過剰摂取はあっても、特定の栄養素が不足することは希で、不足な栄養素を補うという意味でのサプリメント摂取は必要ありません。

また最近では痩身、美容、アンチエイジングなど目的も変化しており、効果も医学的に証明されていないものが多く出回っています。さらに、ビタミンAやE、ベータカロチンなどは、過剰摂取により死亡率が上昇するなど、成分によっては効果が無いだけでは無く、逆に健康を害する結果になってしまうという臨床研究結果も報告されています。

必要だと思ったサプリメントで病気になる可能性があるとは驚きです。安易に頼るのはよくないことだと分かりました。

宍倉:

使用する場合は不足している栄養素は何かをよく考え、必要性と効果をきちんと理解した上で、安易な使用は控えるようにしましょう。

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