医療現場からの提言

2016年

vol.06 蚊を防ぎ感染症予防を

2年前の夏、約70年ぶりにデング熱の国内感染が確認され、今年4月には県内で初めて、海外から帰国した男性がジカ熱に感染していることが分かりました。蚊に刺されることで感染すると聞きますが、蚊は身近にいるだけに心配です。

宍倉:

日本では蚊に刺されても痒(かゆ)いだけで済みますが、海外では様子が異なります。熱帯・亜熱帯にかかる多くの国では、蚊が媒介する感染症が深刻な問題となっており、罹患(りかん)数の最も多いマラリアは世界中で毎年約4億人が感染し、約200万人が死亡していると推定されています。夏季オリンピックが開催されるブラジル・リオデジャネイロではジカ熱が流行し、妊婦が感染すると小頭症児出産の原因となることから、世界保健機関(WHO)からも「国際衛生緊急事態」が宣言される事態になっています。妊婦さんはもちろんのこと、妊娠の可能性がある女性は流行地を訪れないようにして下さい。また、ジカ熱は性交渉でも感染する可能性がありますので、男性も同じように注意が必要です。

なぜ日本でも感染者がでるようになったのでしょうか?

宍倉:

地球温暖化の影響で日本の平均気温も徐々に上昇し、感染症を媒介する蚊の生息地域も広がってきています。ジカ熱は「ネッタイシマカ」や「ヒトスジシマカ」という蚊により媒介されますが、その「ヒトスジシマカ」は日本にも広く分布しており、一昨年に国内感染が問題になった「デング熱」も同じ「ヒトスジシマカ」が媒介します。ジカ熱やデング熱の流行地域を訪れた方が、現地で蚊に刺されて感染し、そのまま帰国した場合、国内で刺した蚊の体内にウィルスが侵入し、その蚊が別の人を刺すことで、日本でも感染が広がっていくことが心配されます。

蚊に刺されないようにする効果的な対策はどのようなものがありますか?

宍倉:

流行地はもちろん、国内でも蚊に刺されないように、普段からの対策が必要です。屋外では長袖長ズボンを着用し、肌を露出しないことと、虫除けを塗ること。屋内では、窓や玄関、網戸等をしっかり閉めることと、蚊に効く殺虫剤で蚊のいない空間を作ることです。家の周りにボウフラが浮くような水たまりを作らないことも大切です。

最も大切なことは、『かゆいから刺されないようにする』のではなく、『健康や命に関わる感染症から自分を守るために刺されないようにする』という認識に変えることです。

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