医療者から見た地域医療のいま

終末期のがん患者に対する在宅緩和ケア
これからの在宅医療の問題を考えるモデルに

2012. 04. 06   文/梅方久仁子

さくさべ坂通り診療所 大岩孝司医師

病院と在宅ではノウハウが違う

大岩 病院の緩和病棟との違いもあります。病院は施設ですから、いくら患者さん本位に考えても、職員の勤務時間の都合などがあって、管理する必要が出てきます。精神的に強いストレスを感じているがんの患者さんにとって、生活で不自由を感じることは、大きな負担です。在宅では、家族が受け入れてくれさえすれば、すべてが患者さんのペースで進められます。

 でも、在宅には医療関係者が常駐しないというハンディがあります。どちらの場合も、いいところを強化してハンディをどう克服するかが課題になります。つまり解決しなければならない問題に違いがあるのです。

 私たちは、長年在宅緩和ケアを実施してきた経験から、多くのノウハウを身につけてきました。患者さんには大変申し訳ないことですが、こういったノウハウは、失敗からしか得られません。失敗があったとき、その原因をはっきりさせて、次に失敗しないためにはどうするか考える。その積み重ねがたくさんあって、技術が高まっていきます。在宅でどのように問題を解決していくかというノウハウは、病院の緩和ケア病棟に勤めていては得られません。

 2011年8月になって、厚労省のがん対策推進協議会緩和ケア専門委員会の報告書に、「がんの在宅緩和ケア専門の診療所を整備するべきだ」という意見が、初めて盛り込まれました。

 やっと動き出したかなという感じです。残念ながら2012年のがん対策推進基本計画変更案では十分に取り入れられていませんが、地域の実情にあった施策を打ち出して前進することを期待しています。