医療者から見た地域医療のいま

災害時に地域の保健医療を守るには?
「普段からできること」と「地域の力」

2012. 02. 10   文/梅方久仁子

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科・顎顔面外科学分野助教 中久木康一 氏

ニーズを把握する前に、
ともかく動いてみる

現場を重視するとして、現場のニーズを把握するには、どうしたらいいのでしょう。

中久木 ニーズの把握は必要ですが、相手のニーズを完璧に把握するのはたぶん無理だと思います。例えば、歯医者にかかるときも同じです。歯科医師のほうは月に1回くらいは歯石を掃除したほうがいいと思っていても、患者側は痛くなったら行けばいいと思っていますよね。専門家と一般人が考えるニーズは違うし、時間とともにニーズはどんどん変わっていきます。だから、最初はともかく動いてみればいいのではないでしょうか。行ってみて誰も困っていなかったら、計画を変更すればいいんです。

 でも、行政のやり方では、まず調査をして、調査結果が出て、その結果に対して予算が付き、予算に対して人員が配置されて動くという手順になります。行政の立場ではやむを得ないのでしょうが、災害時には、さすがにそれでは遅いかなと思います。

 それから、いろいろな団体が入れ替わり立ち替わり調査に来ると、被災者は疲れ果ててしまいます。アンケートに答えるばかりで、支援はいつまでたっても来ないということにもなりかねません。せめて医療系の調査は1つにまとめるなどして、情報の共有を考えるべきでしょう。