医療者から見た地域医療のいま

災害時に地域の保健医療を守るには?
「普段からできること」と「地域の力」

2012. 02. 10   文/梅方久仁子

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科・顎顔面外科学分野助教 中久木康一 氏

支援者のやる気が
かえって地元の負担になる

実際に活動して、何か気付いたことはありますか。

中久木 実は支援に来た人の善意が、かえって地元の負担になってしまうことがあるんです。他県から派遣されてくる支援者は、やる気満々で、できるだけいろいろな支援をしてあげたいと思っています。でも、それが受け入れ側にとって常にありがたいかというと、そうでもありません。

 支援チームの専門家が「これはぜひやりましょう」と言うと、地元の自治体職員はその打ち合わせや連絡をしなければならず仕事が増えます。寝る間を惜しんで作業をしても、次の日には別の支援チームが来て、別のことを「ぜひやりましょう」と言う。被災地はもともと人手不足で大変な状態なのに、さらに振り回されることになります。

 また、支援者が被災地で1週間くらい働いて地元に戻ると報告会をしますね。「こういう問題がある」という話がその組織の上層部に伝わると、そこから被災地の県の上層部へ連絡が行く。すると「こうしなさい」という指示が、上層部から被災地の現場にいきなり降りてくるわけです。このように上層部の命令で体制などが目まぐるしく変わることもあり、そうなると現場の職員は「昨日の説明と違うじゃないか」と住民になじられて、謝って回らなくてはなりません。これが続くと職員は疲れ果てて、心が壊れてしまいます。

 いつまでも外部から物を持ってくることにも、問題があります。何もしないでも物をもらえるとなると、人は動かなくなります。本当の意味で復興を支援するのであれば、地元経済を活性化するために、支援物資はできるだけ地元で購入するべきでしょう。

 せっかくの善意がすれ違いにならないように、私たちは黒子に徹する必要があります。主体はあくまで地元、それも現場中心でなくてはなりません。それをよく理解しておかないと、善意のはずが押しつけになってしまいます。