地域医療ニュース

高齢化と死の問題に真正面から向き合う
終末期医療に関するシンポジウム開催

2013. 05.21   文/大森勇輝

千葉県ホームヘルパー協議会理事 岩瀬京子 氏

 最後に登壇したのが、「亀田ホームケアサービス勝浦」の岩瀬京子氏だ。岩瀬氏はヘルパー歴13年で、千葉県ホームヘルパー協議会理事も務めている。「訪問介護職員の立場から」というテーマで、実際に経験した事例を紹介した。

 例えば食事について、利用者は粥など柔らかいものを嫌う傾向にあるという。70代の女性は、普通食をテーブルでとるということにこだわり、形がわからなくなるくらい柔らかくするのをとても嫌った。段々と飲み込みが悪くなり、むせたり吐き出したりすることがあったが、それでも本人の意思を尊重し、普通食の摂取を継続。医師から胃ろう造設の提案があったが、最期までテーブルでの食事にこだわり続けた。

 一方、胃ろうを造設した70代男性の場合、飲み込む力があったのでプリンなどを食べていた。ところが、気管切開をして人工呼吸器をつけていたため、プリンのかけらなどが喉から出てきてしまう。それでも、本人・家族の意思を尊重して、訪問看護師も誰も食べるのを止めなかったため、プリンやゼリーを奥さんの介護とともに食べ続け、結局4年間の介護で亡くなった。

 また、ヘルパーが胃ろう造設の判断に立ち会うことはないが、家族に近い立場として話を聞くこともあると岩瀬氏は語った。ある利用者の妻は、本当は本人も家族も胃ろうをするのはいやだったが、薄情だと思われたくないため胃ろう造設をしたという。一方で、本人も胃ろうを造設してからの生活が想像できず不安になるということなど、ヘルパーとして、胃ろうに関するさまざまな不安、悩みを聞くことがあるとした。今後は、亀田総合病院の周辺施設と情報交換しながら、利用者の最期を看取るという仕事が増えるはず。だからこそ、その際に当人の生き方にできるだけ添えるように看取りケアを行っていきたいと締めくくった。