地域医療ニュース
高齢化と死の問題に真正面から向き合う
終末期医療に関するシンポジウム開催
2013. 05.21 文/大森勇輝
終末期医療について考えるべきこと
こういった終末期医療の問題は、もはや医師だけで決着できる問題ではなくなった。そこで、医療関係者だけでなく哲学者や法学者、宗教学者などの協力を得て、2012年に日本老年医学会が決定したのが「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン」である。これは、医学的妥当性ではなく、ANH(人工的水分・栄養補給法)導入に際する倫理的妥当性を提示するもの。つまり、縛りではなく、本人・家族とのコミュニケーションを通じて、適切な意思決定プロセスをたどれるようガイドするものという位置づけだ。「いのちについてどう考えるか」「ANH導入に関する意思決定プロセスにおける留意点」などといった項目を通じて、経口摂取の可能性を十分に評価すること、ANH導入の可否も含めて選択肢を検討すること、本人・家族を含めたチームで考えることなどを訴えている。
また、2001年に発表し2012年に改訂した日本老年医学会の「立場表明」では、年齢による差別への反対、個と文化を尊重する医療およびケア、緩和医療およびケアの普及などを盛り込み、終末期医療に関するケアのあり方を明らかにした。
こうした、ガイドラインなどをもとに、終末期医療について考えるべきことを、飯島氏は次のようにまとめた。すなわち、「本人の意思が基本原則」「コミュニケーションを通して、皆が共に納得できる合意形成を目指す」「本人の人生をより豊かにすることを目指す」「医学的な妥当性をチームで検討する」ことである。そして、最後に終末期医療は結局は一人ひとりの人生観の問題でもあり、だからこそ、超高齢期の「ノーマルな死」についてみんなで考えなければならないと語り、講演を締めくくった。