地域住民からのメッセージ
NPO法人地域医療を育てる会 理事長 藤本晴枝さんに聞く
地元の医療のために1つでもいいから自分でできることを
2011. 9. 1 文/梅方久仁子 写真/田村 充
住民は関心を持つことが大事
地域の医療を再生させるために、われわれができることとは何でしょう?
藤本 地域医療を育てて行くには、医療関係者、行政、住民のそれぞれが力を合わせていかなくてはなりません。
医師の方には、黙っていなくなる前に、ともかく何が起きているのかを発信してほしい。虎ノ門病院の小松秀樹先生が書かれた『医療崩壊』という本では、「立ち去り型サボタージュ」という言葉が使われており、これは「黙っていなくなる」ことです。その場所で何か問題があれば、せめてその地域の人たちにきちんと伝えてから、いなくなってほしいんです。黙っていなくなってしまわれると、住民には何が問題なのかわかりません。
行政に対しては、現場に足を運んで、実際にどうなっているかをわかったうえで、政策を考えてもらえたらと思います。数字としては医師の数は足りていても、現場のドクターは24時間働き通して、疲れ切っているかもしれません。現場がどうなっているかをきちんと見て、対応してほしいですね。
それから、行政には情報の出し方も考えていただければと思います。ホームページに掲載したり広報に載せたりしただけでは、実際にはほとんど伝わっていないことがあります。いまでもいろいろな健康診断や健康教室をやっていますが、該当者がほとんど知らないことが、よくあります。
わかりやすさという点も重要です。情報というのは、受け手が受け取って始めて情報になると思います。
もちろん地域住民も、自分たちでできることをやっていく必要があると思います。
それには、ともかく関心を持つことが大事です。そして、医療従事者の言葉に耳を傾けてみることです。ひょっとしたら、昔の治療のことで医療関係者に言いたいことがあるかもしれません。でも、これから先のことを考えたら、昔のことはひとまず置いて、話を聞いてみてはどうでしょう。
地域住民でなんらかの行動を起こしている人には、医療現場のドクターの話を聞いて心を動かされた人が多いんです。私も平井先生とお会いして話を聞いて、「これは大変だ、自分たちも何かしなきゃ」と思って活動を始めました。
ただし、善意からでも想像だけで行動すると、かえって迷惑になることがあります。まず、直接医療現場の方の話を聞くことが大切です。そして自分にできることがあったら、とにかく1つでも、何かやってみてはどうでしょう。