地域住民からのメッセージ

NPO法人地域医療を育てる会 理事長 藤本晴枝さんに聞く

地元の医療のために1つでもいいから自分でできることを

2011. 9. 1   文/梅方久仁子 写真/田村 充

藤本晴枝 氏

住民の合意がなければ医療は回らない

地域を代表するNPO法人から見て、地域住民からは現時点の医療に対してどのような声が上がっていますか?
また、地域の医療の中で意識のギャップを感じている部分がありますでしょうか?

藤本 地域医療についての住民の考えは、自分や家族の状況によって違っています。今、健康な方にとって医療への不安というと、もっぱら救急です。何かあったときに救急車がすぐに来てくれるのか、病院ですぐに診てもらえるのかということですね。この地域では、今は不安だけれど、医療センター(東金九十九里地域医療センター)ができれば何とかなるだろうと思っている方が多いように思います。

 今、病院通いをしている方は、ちょっと違います。医療センターがオープンすると、東金病院は閉院になります。いま東金病院に通っている患者さんは、将来的に新しくできる医療センターで診てもらえるのだろうか、ひょっとして遠くまで通院しなくてはいけなくなるのではと不安に思っています。

 地域の医療機関を有効に活用するためには、一次二次三次といった病院の機能分担は必要だと思います。でも、どの病院に行くかは、住民が自由意志で選ぶことです。利用する立場からすれば、目の前に大きな病院があれば、どうして遠くの病院に行かなきゃいけないんだと思いますよね。でも、同じような機能を持った病院がいくつも点在すれば、どこも医師不足で共倒れしてしまうかもしれません。みんなが身近なところだけではなく、もう少し広い範囲で考えられればいいなと思います。そのあたりは、行政でもっと広報に力を入れていただけるといいですね。住民みんなの合意がなければ、医療は回りません。住民の合意が得られるように、行政には力を注いでほしいと思います。

 住民との合意といえば、例えば静岡のほうでは、脳卒中のときにはどこへ、心疾患ならこちらの医療機関でという詳細なマップがあって、それを住民のみなさんにわかりやすく伝えている地域があります。自分の病気のためにはこの病院で見てもらった方がいいんだとわかれば、みんなその医療機関に行きますよね。医療機関と行政と住民の連携がうまくできている例だと思います。

 患者にとっては自分の病気を診てくれるお医者さんがいるかどうかが、一番の問題なんです。例えば私たちの地域の病院には、呼吸器内科の先生がおられません。医療センターを建てたら医療機関が整うということではなく、本当に足りないものは何かを見極めて、隙間を埋めていくことが大事だと思います。