医療現場からの提言

2019年

vol.02 入浴中の急死は防げるか

「入浴中の急死」はどれくらい起こっているのでしょうか

鈴木:

よく年間約1万9千人が亡くなると報道されますが、これは私たちが2012年に行った大規模調査の結果です。ご高齢なほど亡くなられる方々は増えるので、2020年には2万2千人以上が亡くなられると予測しています。千葉県では年間千人と見積もっています。

特徴はあるのでしょうか

鈴木:

亡くなられる方の95%以上は浴槽の中で発見されています。この現象は世界でも日本特有の現象です。高温の湯にゆっくり漬かる入浴習慣が関係していると思います。また、東京都だけのデータですが、最低気温が下がると亡くなる方が増えることが分かっています。

原因は分かっているのでしょうか

鈴木:

私たちの調査からある仮説が立ちました。亡くなられずに浴槽の中で具合が悪くなった方々について調べると、ご高齢の方が浴槽から出られなくなって救急車が呼ばれることがたくさん起こっていました。この方々は意識が悪くなったり、脱力状態になったりしています。しかし、これらは時間とともに自然に回復していました。実は、意識が悪くなっていた方は体温が上がっていて、助け出されて冷めると回復することがわかったのです。つまり、熱い湯に漬かり体温が上がり、意識が悪くなったり、脱力したりして出られなくなり、さらに体温が上がりさらに症状が重くなるという悪循環が起こっていたのです。このため、人によっては湯の中で溺れたり、血圧が下がったりして死に至ったと考えられます。いわば、お風呂が原因の熱中症です。最近は「ヒートショック」が叫ばれますが、これは医学用語ではありませんし、血圧の上昇や低下が最大の原因とは考え難いと思います。

どのように予防できるのでしょうか

鈴木:

体温上昇が原因とすれば、湯の温度を高くしないことと、湯に漬かる時間を短くすることが有効です。消費者庁が41度未満10分以内の入浴を呼び掛けているのはこのためです。冬場は湯温が高く長風呂になりやすいので注意が必要です。また、公衆浴場の利用や、ご家族のこまめな声掛けも大切だと考えています。

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