医療現場からの提言

2019年

vol.10 1回照射での根治達成

重粒子線治療とはどのような治療でしょうか

藤澤:

重粒子線治療は体表層部の線量は低く、標的とするがん組織に大きなエネルギーを放出し、DNAを直接切断することによりがん細胞を殺す効果を発揮する新しい放射線治療の一つです。千葉市稲毛区にある放射線医学総合研究所重粒子線治療センターは1994年6月から治療を開始し、今まで多くの優れた治療成績を報告し、世界をリードしています。前立腺がんが最も多く、次いで頭頚部がん、骨軟部腫瘍、肺がんなど全身の悪性腫瘍を対象としています。

どのような治療を行うのでしょうか

藤澤:

肺がん治療は1994年11月に開始され、私は第1例目の治療例から昨年までの約千例全てに臨床研究班の班長として研究および先進医療に参加してきました。最初の頃は従来からのX線治療と同様に16回照射からスタートしましたが、照射回数を減らすとともに呼吸に合わせて治療を行う方法を開発して、現在放射線治療医としては夢の領域といわれる1回照射による根治治療を達成しています。これは放医研の方々の努力の賜物(たまもの)と敬意を表します。臨床的には比較的早期のⅠ期非小細胞肺がんの長期生存率は外科治療の同病期の成績に近似し良好であり、外科治療との比較研究が近い将来行われるものと考えています。

課題は

藤澤:

今後の課題としては治療施設が放医研も含めて6施設(千葉、神奈川、大阪、群馬、兵庫、佐賀)と少ないことおよび現在まだ保険医療で治療できないことがあげられます。施設数については現在山形に建設中であり、今後増えていくものと期待しています。保険医療については現在検討されており、同様の性質を示す陽子線とセットで収載される方向にあると聞いています。保険医療に収載されれば患者はもとより、家族にも大きな福音になるものと信じます。

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