医療者から見た地域医療のいま
健康フォーラムを10年続けて住民との共通意識を持つ
2011.11.16 文/大森勇輝
医師会としては、地域で「健康フォーラム」を開催するなどの活動をされています。その活動の詳細と、開催のきっかけや目的をお聞かせください。
大川 今年、医師会主催で初めて茂原市民会館で「健康フォーラム」(茂原市長生郡健康フォーラム2011)を開きました。これまで、医師会主催では一度も行われなかったのですが、私が2010年の4月に医師会長になった際、「これはぜひとも実現しよう」と決意し、今年6月に開催したわけです。
この健康フォーラムには大きく二つの意味があります。一つは、冒頭でもお話ししましたように、この地域は医師も看護師も非常に少ないですけれど、実際に住民がそれで困っているかというと、必ずしもそうではないということ。とてもうまくバランスを保っているんです。また、この地域には、脳卒中や心筋梗塞といった高度な処置を必要とする病気に対応したいわゆる3次救急病院がありません。では、ないから心配かというと、この地域は幸い陸の孤島でもなんでもなく、千葉県の循環器病センターまで救急車で20分、千葉労災病院なら40分くらいで行けます。管外搬送が若干長くはなりますが、大きな問題もないし住民に不安はないと思います。
もう一つは、これから高齢者層が増えてきます。増えていけば医療需要が相当伸びるでしょう。だからといって、新しい医療機関はなかなかできるものではありません。ベッド数を増やしたりとかということも難しい。ところが、これから高齢者層が増えていくことに対して、医師も住民も危機感がありません。こんな状況で高齢化が進んだら、5年、10年後には大変なことになります。それに対して少しずつ準備するという意味で、健康フォーラムで現在、そして今後の医療状況を説明するわけです。しかも、1回完結ではなく時間をかけて進めていきたいと考えています。10年くらい続けていけば、住民の方と医療に対する共通意識が持てるのではと考えています。