医療者から見た地域医療のいま
健康フォーラムを10年続けて住民との共通意識を持つ
2011.11.16 文/大森勇輝
茂原市長生郡医師会長 大川 昌権 氏
診療所で日々患者と向き合うとともに、茂原市長生郡医師会長として地域の開業医を束ねる大川昌権医師。ひとりの医者として、また医師会長として長生地域の医療の現場を長く見てきた大川医師が語る地域医療のあり方とは?
健康フォーラムを通じて
高齢化問題への意識を高める
日ごろから感じている地域医療の問題点はどのようものでしょうか?
大川 山武長生夷隅の医療圏は4、5年前から医療過疎、医療の危機が迫っている地域だと言われています。10万人あたりの医師、看護師といった医療従事者の数が千葉県の中で一番少ないと。まったくその通りで、平成18年には夜間の2次救急の輪番制が破たんし、空白日が月の半分以上に及んでしまいました。その一番の原因となったのが長生病院の医師不足です。また、ちょうど同じころに銚子市立総合病院の休止もあり、そのあたりから地域医療の崩壊ということが言われるようになりました。ただ、平成20年に誕生した茂原市の新市長(田中豊彦氏)は、医療に非常に熱心に取り組んでいます。とりわけ2次救急の空白発生に対して、委員会を作ったり医師会と協議したりと対策を進めた結果、空白日を埋められるような医療体制を整備できたのです。
長生郡市において、医師と患者さんとの関係はいかがでしょう?
大川 何かにつけて文句を言ういわゆる「モンスターペイシェント」が話題になりますが、そういうのは昔からあったんだと思います。ただ、そういう人が増えているとは思いません。ごく一部に過ぎないし、医師側にも問題があるんでしょう。実際、ベテランの医師に聞くと、そういう患者さんとは一度も出会ったことがないという人が圧倒的に多いですよ。