2024.05.31
麻しん(はしか)とは
麻しんは、一般的に「はしか」とも呼ばれ、麻しんウイルスというウイルスによって引き起こされる急性の全身性感染症です。感染経路は「接触感染」「飛沫感染」だけでなく、「空気感染」でも感染が広がっていきます。麻しん患者1人で、12~18人の免疫のない人に感染させるといわれています。
日本では、1950年代においては年間数千人の麻しんによる死亡者が発生していましたが、ワクチンの普及により、死亡者数や患者数は減少していきました。そして2015年3月にはWHO西太平洋地域事務局より、日本が「麻しん排除状態である」ことが認定されました。
しかし現在でも、旅行者などにより海外からウイルスが持ち込まれることによる発生が確認されています。とくに2023年からの世界的な流行は日本国内にも影響を及ぼしており、2024年の1~3月の国内感染者数は、すでに昨年1年間の3分の2以上の20人に上っています。
麻しん(はしか)の症状
麻しんウイルスに感染して10~12日の潜伏期間を経た後に、38度前後の発熱が2~3日程度続き、体のだるさ、咳、鼻水、目の充血、目やになどの症状が現れます。またこの段階で、口の中の頬粘膜にコプリック斑という約1mm径の小さな白色の斑点が現れることが多いです。その後いったん解熱傾向になりますが、半日程度で39度以上の高熱と発疹が現れます。発疹は耳の後ろ、首、おでこなどから出始め、2日程度で全身に広がっていきます。高熱は3~4日続きますが、合併症などがなければ、7~10日程度で回復していきます。
しかし、麻しんは中耳炎、肺炎を合併しやすく、脳炎は麻しん患者の約0.1%にみられ、治癒しても約25%に重度の後遺症を残すといわれています。
また、麻しんにかかった後数年~十数年経過してから発症する亜急性硬化性全脳炎は、頻度は高くないものの(麻しん患者数万人に1人程度といわれていましたが、近年頻度が増えているという報告もあり)、寝たきりになったり、命を落としたりすることもある重篤な合併症として知られています。
そのほか、妊婦が麻しんに感染すると、重症化したり、流産や早産を起こす可能性があります。
麻しん(はしか)の治療、予防
麻しんウイルスに対する特効薬は存在しないため、治療は発熱に対する解熱剤などの薬物治療、水分がとりづらいことに対する点滴治療、といった対処療法が主体となります。また、細菌感染による中耳炎や肺炎を合併した場合は抗菌薬を使用します。重症化した場合は入院の上酸素投与などの呼吸管理が必要になることもあります。
麻しんウイルスは非常に感染力が強く、「空気感染」もするため、手洗いやマスクのみで予防はできません。また免疫をもっていない人が感染すると、ほぼ100%発症するといわれています。それゆえワクチン接種による予防が大切です。
麻しん含有ワクチン(原則接種されているのは、麻しん風しん混合ワクチン)を接種することで、約95%の人が麻しんウイルスに対する免疫を得ることができるといわれています。また2回の接種を受けることで、1回の接種では免疫が得られなかった人の多くに免疫をつけることができます。
わが国では2006年から、原則麻しん風しん混合ワクチンによる2回接種(1歳児:第1期、小学校入学前1年間:第2期)が定期接種化されています。それ以前に生まれた人は、免疫が十分についていない可能性があります。母子健康手帳などで接種履歴をご確認いただくか、お近くの医療機関での抗体価検査をご検討いただくのがよいでしょう。
医療機関受診前に、必ず連絡を
ワクチンの接種を完了していない人で、発熱、気道症状(咳、鼻水など)、目の症状(目の充血、目やになど)に続き発疹が出てきた場合は、麻しんが疑われます。医療機関へ受診される際には、受診前に医療機関に連絡し、「症状」についてあらかじめお伝えください。