地域医療再生プログラムとは?
第1回 「医療崩壊」と千葉県の医療
?千葉県は全国的な「医療崩壊」のシンボル。だからこそ再生のモデルにもなり得る?
2011. 9. 1 文/桶谷仁志
全国に応用できる「太平洋側から都市部へ」という特徴
地方の拠点病院、自治体病院は、診療報酬の大幅なマイナス改定、若い医師の現場からの引き上げという二重のダメージを受けて疲弊し、破綻するケースも相次ぎました。中でも最も大きなニュースになったのが、2008年(平成20年)9月に休院した銚子市立総合病院です(2010年5月に診療再開)。病床数約400床、16診療科を持つ地域の拠点病院が休院に追い込まれるという事態は、「銚子ショック」として全国に報道されました。銚子市では、休院の理由の冒頭に「関連大学などからの医師派遣が極めて困難であること」を挙げています。全国で徐々に進行していた医療崩壊の流れが、典型的な形で、千葉県の医療現場を直撃したのです。
こうして千葉県は、日本の医療崩壊のいわばシンボルになりました。とはいえ現在は、逆に地域医療の再生モデルを提示、実践する県として、新しく生まれ変わろうとしています。
銚子市立総合病院の休院から2年後の2010年(平成22年)、崩壊する地域医療の立て直しを目的とする地域医療再生基金の構想が、厚生労働省から発表されました。その後、結果的に、全国に369ある二次医療圏(通院から入院まで一般的な医療サービスを提供可能な医療圏)のうち各都道府県ごとに2つのエリアを選び、地域の医療再生のために2エリア合計で50億円が交付されることになりました。この基金設立の動きに呼応して、千葉県が立案・申請し、国の審査を経て認められた地域医療の再生計画が「千葉県地域医療再生プログラム」です。
千葉県では、医療サービスの提供体制に問題を抱えた香取・海匝(かとり・かいそう)地域、山武・長生・夷隅(さんぶ・ちょうせい・いすみ)地域という2つのエリアを選び、各医療圏が抱える課題の解決を図るための事業や全県的な医師等の確保対策など実施していくとしています。
次回は、千葉県の医療の現状と課題、このプログラムで選ばれた2つの二次医療圏の特徴、さらに千葉県全体で最終的に目指すべき地域医療のあり方について、もう少し詳しく、見ていくことにしましょう。