医療者から見た地域医療のいま

救急なくして医療なし!
地域の救急医療の明日を住民とともに考え続ける

2012. 02. 01   文/大森勇輝

清水三郎医院 清水三郎 氏

救急救命講習会を通じて
住民と医療知識の共有を目指す

一方で、住民サイドの問題点等はありますか?

清水 私はかつて夜間急病診療所の責任者を務めていました。そのころも、「赤ちゃんが寝ない」「吐いてしまった」とか、とても救急ではない用件で来る人がいたのも事実です。救急車の出動件数は1日20件ほどありますが、やはり、全部が全部、救急車が必要というわけではなく、不適正な利用も多いと思います。

 そういった利用が重なると、本当に必要な時に救急車がすべて出払ってしまうこともあるわけです。実際、白子海岸で落雷事故があった際に、救急車が出払っていて近くにいないということもありました。

そうなると必要なのは住民の意識改革だと。

清水 そうですね。今は、住民向けに救急救命の講習会をやっています。自分から「やってみるよ」と言ったもんだから、やることになったんですが。たまたま茂原市立東郷小学校の校医をやっていたので、そこで最初の講習会を開きました。父兄会とかバザーには参加しないが、新入生のための就学時検診なら親は必ず付き添いで来ると踏んで、それに合わせて「子どもの救急講習」を開催したところ大成功しましたね。昨年(2011年)は長生郡市全域に範囲を広げて回っていました。

謝礼などは出るのですか?

清水 いいえ。お金は一切もらっていません。すべてボランティアですね。とにかく一人でも多くの住民に医療の知識を届けたい、そう願ってやっております。

今後の地域医療に関してどのようにお考えでしょうか?

清水 今は医師同士のつながりが減っていますね。「子どもの救急講習」も制度化しているわけではありませんから、もしかすると終わってしまうかもしれません。ですから、若い医師も技術だけでなく、社会人として人と人とのつながり方を勉強しながら、そういったことを続けてやってほしいと思います。