医療者から見た地域医療のいま
救急なくして医療なし!
地域の救急医療の明日を住民とともに考え続ける
2012. 02. 01 文/大森勇輝
空白が生じる前から危惧されていたと。
清水 その通りです。というのも、2次救急を担当していた病院において、夜間の看護師の数が減っていました。そういった情報を事前に把握しておりましたので……。それで、2次救急の担当病院が一つ辞め、二つ辞めといった事態になっていったのです。
空白日が解消された要因は?
清水 平成20年に開かれた「地域医療フォーラム」が、一つのきっかけではないかと思います。
1次救急、2次救急の予算は、人口比率に合わせて各市町村が分担しています。そのことを踏まえ、フォーラムに参加した宍倉病院の宍倉朋胤先生が「このままだと、地域の救急医療はダメになる」と語り、住民の負担が増えてしまうことの必要性を訴えたところ、会場にいた人たちは「いいです!」となったわけです。そのときの住民のパワーはすごかったですね。その場には茂原市長も来ていました。こののち、市長が中心となって議会で審議した結果、正式に拠出金の増額が決まりました。
そもそも2次救急を担うために、各病院はパートタイムの医師を雇っています。その人件費に見合う予算がもらえなければ、各病院とも持ち出しということになり、2次救急の輪番を担当すればするほど赤字になってしまいます。ですから、その増額分でパートの医師の人件費を賄うことにより、2次輪番制を復活させることができたというわけです。
このような状態を住民はどうとらえていますか?
清水 住民は以前より良くなったと考えているでしょう。ただし、2次救急の輪番制は復活できましたが、一方でまだまだ空白の時間があるのも事実です。一般の診療が終わる夕方6時から夜間急病診療所が始まる夜8時までの2時間ですね。もちろん開いている病院がゼロというわけではありませんが、しっかりと埋まっているとは言い難い。ただ、個人的には、その空白を埋めようとすると病院の負担が激増するため、かえって医療体制の疲弊が進むのではないかと危惧しています。