医療者から見た地域医療のいま

都心とは違う地元密着型の公立病院として
新たな地域医療のあり方を探る

2011. 9. 30   文/大森勇輝

業績のV字回復と
目指すべき病院のあり方

まるで民間企業のような経営ですね。

氏原 民間ならもっとラクにできるんでしょうが、公立病院だからいろいろとしばりがあり、それが大変です。それでも、備品の購入の仕方などいくらでも経費を節約する方法はありますね。

実際、業績はどう変化しましたか?

氏原 1年目の赤字は7億6000万円で、2年目が3億9000万円。3年目は3億8000万円と微減でしたが、その次の年は1億1000万円で今年度はプラスにできるのではと考えています。

地域に根付いた公立病院として、今後はどういう展開を考えていますか?

氏原 公立病院というのは国民皆保険制度に合わせて、昭和20年代後半から30年代にかけて全国的に一斉に生まれました。当時は、高速道路もなく、道路自体整備されていないから、患者はバスなどを使って1日仕事で地元の公立病院に通っていたのです。ところが、交通網の発達により、高速道路を使えば千葉市の病院や東京の大病院などにも行けるようになり、患者さんは自分の信頼できる病院を選べるようになったわけです。それに合わせて、公立病院の役割が変わるのは当然のこと。

 今年の1月、当院は地域医療支援病院の承認を受けました。これは、地元の開業医などからの患者の紹介率が60%を上回り、かつ、逆に地元の医療機関に患者を紹介する逆紹介率が30%を超えることなどが要件となっています。そこで、さらに地元密着型の病院とするべく、例えば、現在、当院が導入している電子カルテを、将来的には周囲の医療機関と共通化し、医療情報を共有するというのも一つの手でしょう。いずれにせよ、地域医療支援病院として、地域の医療機関、開業医、行政関係者と一体になって、この地域に住む人々の健康を総合的に保障していきたいと考えています。