医療者から見た地域医療のいま
都心とは違う地元密着型の公立病院として
新たな地域医療のあり方を探る
2011. 9. 30 文/大森勇輝
医師は激減、病棟は閉鎖と、一時は崩壊の危機に瀕した県立佐原病院。しかし、そこから再び医師を粘り強く集め、病棟を改編し、香取市を中心とする県北東部の拠点病院として地域の健康を守る体制を新たに築きだした。そんな、発展途上にある県立佐原病院が地域で果たせる役割とは何なのか。また、目指す病院像はどういったものなのか。同病院事務方のトップにして復活の立役者、氏原強事務局長に話をうかがった。
地域医療の新機軸となる
訪問看護とオープンシステム
地域における県立佐原病院の意義はどこにあるとお考えですか?
氏原 やはり一番大切なことは救急医療の提供ですね。救急患者の数は年間7000人ほどですが、とにかく365日24時間、救急車で運ばれてくる、あるいは自らやってくる患者すべてを受け入れます。もちろん、医師がいなければ仕方ありませんが、内科と外科はローテーションを組んでいつでも対応できるようにしていますし、整形外科の医師もオンコールで夜中でも呼び出せるのです。緊急手術も断らずにすぐやるような体制を取っており、県が指定する災害拠点病院にもなっています。
先だっての東日本大震災の際は、どのような事態でしたか?
氏原 停電にもなって大変でしたね。ただ、災害拠点病院としていざというときの対応策を考えておかなければということで、実は今年の1月から何度か災害時の行動について話し合ってきたんです。私や医師の中には、阪神淡路大震災の経験者もおりましたし。そういうこともあって、震災から3日後の3月14日には、外来患者の受け入れを再開できました。
では、そのような地域の中核病院として、地域医療にどう向き合うべきだと考えていますか?
氏原 当院の診療圏は、茨城県まで含む20万?30万人くらいをカバーしています。また、香取市の人口に占める高齢者の割合は26.9%。とりわけ当院の患者のおよそ90%が高齢者です。ですから、都会とは違う地元密着型の医療を目指しています。その中心となるのが、平成17年4月に設置した「地域医療連携センター」です。センターは、地域連携室、訪問看護室、医療相談という3本柱からなっており、地元の開業医や社会福祉施設などと協力しながら、地域の医療水準を上げていければと考えております。