地域医療ニュース
ベストセラー「『平穏死』のすすめ」の著者が語る
これからの幸せな最期の迎え方
2013. 07.05 文/大森勇輝
一方、多くの病院では、高齢者の誤嚥性肺炎の患者がベッドを占拠してしまう事態に陥っていた。病院はそういった患者の肺炎を治療し、胃ろうを造設して施設へと送り返すようになっていく。
もともと、胃ろうは終末期の患者への延命のためのものではなかった。一時的に口から食べられない患者や、先天性の食道狭窄で命が危険にさらされた子どもを救うためのもの。脳梗塞で脳の一部が機能しなくなった人などが胃ろうで栄養回復し、リハビリして社会復帰できる例もあり、石飛氏は胃ろうがすべて悪ではないという。それがいつのまにか終末期の人にも使うようになっていったことが問題なのだ。事実、胃ろうに関する実態調査によると、特別養護老人ホームで胃ろうをつけている人の実に96.6%が要介護度4または5であり、寝たきりで意思伝達できない人も9割を占めているという。
胃ろうでは、年齢や体重を基準に機械的にカロリー量を決めるが、栄養を受け付けなくなった人に注入すれば逆流が起きてしまう。ほとんど動けない人に機械的に胃ろうで栄養を注入してしまうと、本来、誤嚥性肺炎を防ぐ目的でつけたにもかかわらず、逆流により誤嚥性肺炎になる例が多くなるのだ。実際、胃ろうの最大の合併症が誤嚥性肺炎と便秘であるという。そうなると、胃ろうの人はまた入院することになる。石飛氏がホームに赴任してから、病院とホームを行ったり来たりする人が何人もいて、ときには巡回中に窒息死している人を発見したこともあったという。石飛氏は、方法として胃ろうがいけないのではなく、胃ろうによる強制的、機械的な栄養補給が問題だと指摘するのだ。