地域医療ニュース
医療と福祉の連携を市民の視点で考える
地域シンポジウムが東金市で開催
2013. 06.03 文/大森勇輝
「大病院信仰」の意識を変えてほしい
さらに、篠原氏が考える“信頼に足る主治医”とは、単にがん治療に対する知識、経験、技術に長けているだけでなく、患者が率直に質問をした際に、納得できるように説明してくれる医師だとする。ときには、悪い知らせも十分な配慮のもと、正確に伝えることができ、適切な治療の選択や中止を患者に話すことができる医師が信頼できると述べた。
また、それに加えて篠原氏が力説したのは、大病院信仰が強すぎるが、その意識を変えてほしいということ。確かにいい治療を受けたい気持ちはわかるが、治ってからもわざわざ数時間かけてがん診療連携拠点病院や専門病院に行きたがる人が多いという。だが、医療資源を分け合う観点からも、病状が落ち着いたら、地元のかかりつけ医に診てもらうべきだと語った。
最後に篠原氏も深くかかわっている緩和ケアについて解説。実は治療の初期段階から辛いことがあれば、緩和ケアが受けられるという。ところが、千葉県が行ったがん患者のアンケート調査によると、実際に緩和ケアを受けた経験がある患者はたったの8%しかいない。千葉県がんセンターには優れた緩和ケアセンターがあり、また、篠原氏が勤務するさんむ医療センターにも2013年秋には緩和ケア病棟ができるという。また、すでに同院では2007年より完全予約制の緩和ケア外来をスタートさせている。がん患者の増加、そして高齢化に伴い利用者の数は急増しているという。だからこそ、「がんになったら緩和ケア」と訴えていると述べた。
がん医療の今後について篠原氏は、さんむ医療センターを中心に在宅の緩和ケアネットワークを築き、地域で緩和ケアを受けられるようにし、緩和ケアを含め「その人らしい生の援助」を行っていくこと。そのためには、患者、家族、かかりつけ医、薬剤師、看護師、訪問看護師、治療医が一体となって、神輿を担いでいかなければいけないと述べ、基調講演を締めくくった。