地域医療ニュース
医療連携の強化を図るツール
「地域医療連携パス」に関するシンポジウムを開催
2012. 07. 27 文/大森勇輝
最後は、がんを巡る連携パスの現状と課題。発表者は千葉県がん診療連携協議会会長で千葉県がんセンター副センター長の木村秀樹氏である。話は、千葉県におけるがん治療の現状から始まった。
現在、千葉県には14の「がん診療連携拠点病院」があり、実務者レベルで連携パスについて話し合っているという。また、千葉県がんセンターは病院独自のパスも発行している。
こうした連携パスを使った地域医療連携を行うことにより、患者、かかりつけ医、かかりつけ病院、拠点病院、専門病院それぞれがメリットを享受できるという。すなわち、患者は質的に保証された計画的な診療を自宅近くで受けられる。かかりつけ医は、診療計画を病院と共有し、地域に根ざした医療が提供できる。そして、病院は外来診療をスリム化し、専門的治療に専念できるというわけだ。また、訪問看護ステーションや訪問診療医、病院が連携パスを使い、協働しながら在宅での緩和ケアを行うモデルを提言した。
ただ、実務者が積極的に連携パスを使わないと、なかなか普及しないという現実も指摘。また、アンケートの結果により、施設によっても地域医療連携、そして連携パスへの関わり方に温度差があるということもわかったという。
そのため、実務者が連携パスの使用可否を確認し、担当医師に連絡すること、実務者、あるいは担当医師、看護師が、連携パスについて患者に直接説明すること、さらに実務者が連携パスの使用目的をきちんと説明し、明確化することなどを課題として挙げた。
以上で発表は終了し、1時間半近くにおよんだシンポジウムは閉会となった。このあと、「情報交換会」が行われ、「連携パス」による連携と並行して、人と人同士の顔の見える関係の構築も進め、会は終了した。