地域住民からのメッセージ
自治体病院のオーナーは「住民」だという自覚、
保険制度も「みんなの財産」だという意識が必要
2011.11.16 文/梅方久仁子
みんなの財産としての保険制度
医療者の側はどうでしょう。
伊関 医療者の側もコミュニケーションを大切にする必要があると思います。私は、最近、「共感を広げる」ことの大切さを感じています。人と人のつながりの中で共感があれば、何か問題が起きたときには、問題を解決する、すき間を埋める動きが起こります。これまでは、医師など医療関係者の献身的な努力で問題を解決していました。でも、いまは医療関係者だけでは、問題解決に限界があります。行政や福祉関係者など他の職種や地域住民との間に共感を広げていかなくてはなりません。医療者が正直に現状を話して、患者さんや地域住民とコミュニケーションを取り、共感の輪を広げていくことが大切です。
今年(平成23年)は、国民皆保険(健康保険)制度が実現してから、ちょうど50年になります。国民皆保険制度は、すべての国民が、国民健康保険や社会保険、共済保険にお金を出し合い、医療の必要な状態になったとき、安い費用で医療を受けられるようにするという制度です。国民皆保険制度がなければ、国民は安心して医療にかかることができません。
私は、国民皆保険の意義を、①すべての国民が、適切な医療を適正な負担で受けることができること、②すべての国民が必要な医療を受けることができる医療機関と医療スタッフがいること、③保険制度が財政破綻をせずに安定的に運営されることの3つがあると考えています。
現在は、特に国民皆保険制度に関して、②の財源の問題が議論されることが多いですが、①の安定的に医療をできる体制を維持していくことも重要な課題であると考えます。国民も国民皆保険制度の意味を再認識して、大切に医療を使っていくという意識を持つことが必要と考えます。
私は、全国の医療崩壊の現場を回って、地域のレベルがその地域の医療のレベルを決めることを強く感じています。自分のことしか考えない住民ばかりの土地からは、医師が立ち去り、後には「病院」という建物だけが残ることになります。
その一方、私は、地域の医療問題に取り組むことが、地域の民主主義の再生につながる可能性を感じています。医療問題は、住民にとって個人のエゴが最も出やすく、意見も対立しやすい問題です。しかし、意見の違いを乗り越えて、相手の立場を考えて議論ができなければ医療問題は解決しないのです。
インタビューにご登場いただいた伊関先生をお招きした、地域医療フォーラムが茂原市で開催されます。伊関先生には「地域医療 再生への処方箋」をテーマに講演してもらいます。お近くの方はぜひともご参加ください。
家族で考えよう がん予防 みんなで考えよう 地域医療
- 日時:平成23年11月20日(日)13:00?16:00
- 場所:茂原市民会館(千葉県茂原市茂原101番地)
- 参加費:無料(手話通訳あり)
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フォーラム内容:
【第一部】
講演1 乳がんの予防と対策
講演2 前立腺がんの予防と対策
講演3 各市町村でのがん検診の取り組みについて
【第二部】
特別講演 「地域医療 再生への処方箋」