地域住民からのメッセージ
自治体病院のオーナーは「住民」だという自覚、
保険制度も「みんなの財産」だという意識が必要
2011.11.16 文/梅方久仁子
公立病院がある地域は国民健康保険料が安い?!
自治体病院はどうでしょう。特に、赤字体質の自治体病院についてはどうお考えですか。
伊関 自治体病院の役割については、一度きちんと議論して見直す必要があると思います。
千葉県は、実は全国でいちばん国民健康保険料が安い地域です。全国市町村の国民健康保険料について、「地域差指数」という指標があります。単なる金額比較では高齢者が多い地域が不利になるので、年齢調整をして国民健康保険料の地域差を比較できるようにしたものです。全国平均は1ですが千葉県はほとんどの市町村で1未満で、いちばん低い芝山町は0.7という低さです。
実は公立病院が多いところは地域差指数が低い傾向にあります。千葉県は過去の政策で、国民健康保険が運営する診療施設、いわゆる「国保直診」病院を充実させてきました。そのため国保病院が多くて、旭中央病院や松戸市立病院など自治体病院のほとんどがそうです。
国保病院は、一般的にムダな検査や入院を行わない“費用を抑えた「適切な」”医療を目指す傾向があります。病院経営は赤字になっても、全体の医療費を抑えたほうが、全体として国保からの支出は減るからです。これが民間病院ですと、病院として黒字にしなくてはやっていけません。
平成21年度の国民全体の医療費は約36兆円に及びます。一方、自治体病院全体への自治体からの繰り入れ額は約7000億円です。この7000億円を抑えるよりも、自治体病院が適正な医療費の標準を作ってもらって医療費全体を下げていく方が、全体としてはコストダウンになる。そういう発想があっても良いのではないでしょうか。
もちろん、自治体病院にも問題点はたくさんあります。経営の素人が事務をやって効率が悪かったり、政争の具になりやすかったり。一度、自治体病院の経営が破綻すると数億、数十億単位でお金が必要になります。自治体病院もお役所体質を改め、安定的に良い医療を提供できるような体制にしていく必要があります。私は、病院の経営の形態はすべて自治体病院とか、すべて民間病院とかでなく、様々な種類の病院があって、お互いが緊張感を持ちながら切磋琢磨していくことで結局は良い医療が提供できるのではないかとも考えています。