医療現場からの提言

2019年

vol.05 母に寄り添う産後ケア

産後ケア事業とは何ですか

森川:

近年、核家族化や地域のつながりの希薄化から妊産褥婦を支える力が弱くなり、妊娠・出産・子育てに関する不安・負担への対応が課題になっています。また、児童虐待の分析から妊娠期・出産後早期からの支援が重要であることが明らかになり「健やか親子21(第2次)」ではすべての子どもが健やかに育つ社会を目指し、▽育てにくさを感じる親に寄り添う支援▽妊娠期からの児童虐待防止対策の二つを重要課題としています。
このことから、妊娠期より切れ目のない支援を目指し、子育て世代包括支援センターが全市町村に設置されることとなり、産後ケア事業はこのセンターの1事業として推進されることになりました。

産後ケアの対象になる期間は

森川:

産後ケアは、母親が出産後、産院から地域に帰り育児を中心とする生活を送るにあたり、家族の支援を受けながら健やかな育児ができるよう助産師が中心となり身体的回復と心理的安定を促進するための支援を行う事業です。
子育てはいつの時期でも不安や悩みが付きもの。中でも産後4カ月までは種々の感情が出現しやすい時期で、適切な支援を早期に行わないと重症化する可能性があります。このことから自治体にもよりますが事業は産後4カ月未満が対象となっていることが多いです。

どんな支援が受けられるのですか

森川:

訪問型・日帰り型・宿泊型がありますが、居住する地域により異なるため、地元の保健センターに問い合わせ下さい。産後ケアの最大の利点は助産師を中心とした専門職員が時間をかけ利用者と接することが出来ること。母親の話に耳を傾け、授乳の確認・指導その他の育児支援を行うことで不安が解消されたという母親が多いです。母親の気持ちに寄り添い、状況に応じた支援が行われているからだと考えています。

今後の課題は

森川:

現在の産後ケアに関して各自治体でかなりの温度差があります。少子高齢化、人口減により財政が厳しく予算が回せないという事情もあると思いますが、今後少子化が進めば産院(特に地方)の経営も厳しくなり産院単体での事業継続は困難になります。大事なことはその地域に何が必要なのか、何を求められているのかをわれわれ産科医療者と行政が密に連絡を取り合い、お互いが両輪として産後ケアを進めていくことだと考えています。

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