医療現場からの提言

2019年

vol.09 出生前診断の精度向上

出生前診断とはどんな検査ですか

長田:

赤ちゃんが100人生まれて来た時、そのうち5人ぐらいの赤ちゃんに何らかの病気が見つかります。このような赤ちゃんが生まれた時から持っている病気を総称して先天性疾患と呼んでいます。そして、妊娠中に先天性疾患を診断するのが出生前診断です。
先天性疾患の約25%が染色体の病気とされています。他には遺伝子の病気、お母さんの周りの環境あるいはお母さんの体に入ってきたものが原因である病気、多数の原因が重なり合って起きる病気などがあります。これらの中で妊娠中に例外なく確定診断できるのは、今のところ染色体の病気だけです。従って、かなりの皆さんは出生前診断イコール染色体の検査と考えられているようです。

具体的にはどのような検査ですか

長田:

妊娠中の染色体疾患の検査法は、確定検査と非確定検査の2種類に分類されます。最終診断となる確定検査には、羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査があります。非確定検査には、母体血清マーカー検査や超音波検査(NT)があります。非確定検査では、結果は何分の1とか何%とかの確率、あるいは基準のラインを設けてそれよりも高い低いかで陽性か陰性で報告されます。非確定検査で結果が陽性であった場合は、確定検査で実際の染色体の本数などを調べる必要があります。

精度は高いのですか

長田:

わが国で6年前から始まった、「母体血を用いた無侵襲的胎児染色体検査(NIPT)」は、非確定的検査の1つです。NIPTはお母さんの血液中を流れている赤ちゃんのDNAを調べる検査で、他の非確定的検査より精度は格段に高まりました。日本産科婦人科学会のNIPTに関する指針では、検査を受けられるのは35歳以上の妊娠女性で、検査する染色体の病気は3種類の染色体(21番・18番・13番)のトリソミーに限定されています。トリソミーとは染色体の本数が1本多い病気で、21番染色体トリソミーの一般名はダウン症です。

NIPTの課題は

長田:

NIPTを実施できる施設は、指針の定める条件を満たした認定施設に限定されています。しかし、最近認可を受けていない施設で、NIPTが年齢制限なく盛んに行われるようになって、これが問題化しています。これらの認可外施設では、十分な事前のカウンセリングや、陽性であった場合のケアが行われないことが多く、さらにはトリソミー以外に性染色体の病気や染色体の一部欠失をオプションで調べています。そのため、陽性者が混乱をきたして認可施設へ相談に来ることが起きています。このような状況下、厚生労働省はこの秋に専門家を集めて今後の我が国のNIPT運用に関して議論を行う予定となっています。一刻も早く有効な対策が練られることが望まれます。

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