健康トピックス

2023.02.28

乾燥肌(皮脂欠乏症・乾皮症)

乾燥肌とは

乾燥肌は、医学的には「皮脂欠乏症」といい、皮膚の脂(皮脂)等が減少することにより皮膚の水分保持能力の低下が生じ、皮膚が粉をふいたように白くカサカサになったり、ひび割れや痒みを生じるようになります。さらに進行すると湿疹・皮膚炎を生じてしまいます。一般に、秋から冬、高齢者のひざから下に多くみられますが、なかには全身に年間通じてみられる人もいます。また、思春期までの小児は基本的に乾燥肌です。

皮膚の構造・機能

皮膚は表皮、真皮、皮下組織の三層構造をしていますが、一番外側の層である表皮に皮膚の乾燥を防ぐ物質が存在しています。
まずは皮膚の表面を覆い水分の蒸発・喪失を防ぐ「皮脂」で、これは毛穴の奥に存在する皮脂腺から分泌される脂のことで、汗などとともに皮膚表面に分泌されます。
つぎに「角質細胞間脂質」というものがあります。これは表皮の最外層である角質層を構成する角質細胞同士の間を埋めるように存在し、水分を閉じ込めるようにする働きがあります。
その他、角質層に存在するある種のアミノ酸や塩類には水分をとらえて保持する機能があり「天然保湿因子」と呼ばれており、これらの物質が皮脂欠乏症では減少しており、皮膚が乾燥しやすくなっています。

皮膚にはさまざまな機能がありますが、そのなかに『外部からの異物・刺激物やアレルギーの原因物質の侵入を防ぐ』『水分の喪失を防ぐ』というものがあります。
前述の皮脂や角質細胞間脂質、天然保湿因子が減少してしまうとこれらの機能が障害され、痒みや皮膚炎、湿疹、各種アレルギー疾患を引き起こす原因となります。
また、水分の喪失はさらなる皮膚の乾燥をまねき、皮脂欠乏症の増悪を引き起こします。

乾燥肌を引き起こす要因

皮膚の乾燥を引き起こす要因としては、まずは年齢・性別があります。
皮脂の産生には男性ホルモンが大きく関与していますが、これは思春期の頃から分泌が盛んになり、成人以降徐々に分泌が減っていきます。そのため、加齢は皮脂欠乏症の誘因となります。
また、女性はもともと体内に男性ホルモンの量が非常に少ないため、男性よりも早い年齢から皮膚の乾燥が始まるといわれています。
季節としては、秋から冬のいわゆる空気の乾燥しやすい季節に多いとされています。ただし、常にエアコンが強力に作動していて、加湿されていない屋内などでは季節に関係なく皮膚の乾燥が生じることがあります。
生活習慣としては、熱いお風呂に入る、ぬるい温度であっても長時間浸かる、1日に何度も入浴やシャワー浴をする、ナイロンタオルや硬いボディブラシなどで体をゴシゴシ洗う、皮脂を強力に落としてしまう石鹸やボディソープを使用する、肌を長時間寒風にさらす などが挙げられます。
その他、ステロイドの全身投与を長期間行われている方や一部の抗がん剤の投与を受けられている方は、皮膚の菲薄化(薄くなること)のため皮膚からの水分喪失が亢進し、肌の乾燥をきたしやすくなります。
また、血液透析を受けている方は乾燥肌を生じる傾向にあります。
そのほか、アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬などの皮膚疾患、糖尿病などによる神経障害からくる発汗障害、先天性または後天性の無汗症、シェーグレン症候群などでも乾燥肌が引き起こされます。

乾燥肌の治療

皮脂欠乏症、乾燥肌の治療の第一は保湿剤を塗ることです。保湿剤にはいろいろな成分のものがありますが、その中でも特に「ヘパリン類似物質」の効果が高いです。
保湿剤にはクリーム、軟膏、ローション(乳液タイプのもの、化粧水タイプのもの)、泡タイプのもの、スプレータイプのもの等、さまざまな種類があります。実際に使用する際には季節や使用する部位、使い心地の好み等を考慮し、自分にあった、継続して使いやすいものを選んで使うとよいでしょう。適切な使用量としては、チューブに入った保湿剤では人差し指の第一関節まで伸ばした量、ローションでは1円玉大の面積、泡タイプでは500円玉の面積の量で、大人の手のひら2枚分の面積を塗るのが適正とされています(大人が全身に1日2回塗った場合、1日で約20グラム使う計算になります)。目安としては、塗ったところがペタペタ・テカテカするくらい塗るようにしてください。最低でも1日2回、特に効果の高いタイミングとしては入浴やシャワー後にぬるとよいでしょう。塗り方のコツとしては、胴体では八の字型に塗る、腕や足では長軸に対して直角に、すなわち横方向に塗る、乾燥の強い所や乾燥しやすい部位には回数を多めに塗る、手に塗る際は、指の方から優先して、手を洗ったり湯水を使ったりした後ごとに塗る、塗るときは手のひらで優しく伸ばすように塗り、決してすりこまない などを心がけてください。なお、ひっ掻いて湿疹・皮膚炎などになってしまっているところにはステロイド外用剤などを、痒みがひどいときは抗ヒスタミン剤内服などを併用します。保湿剤はあくまでも「予防・火の用心」のための薬ですので、湿疹や強い痒みを治すものではありません。

その他、日常生活で注意することとして、

  • ① 入浴時は熱いお湯や長風呂を避ける
  • ② 体を洗うときは石鹸をよく泡だてで、手のひらで優しく洗う
  • ③ 石鹸やシャンプーのゆすぎ残しが無いようによく洗い流す
  • ④ 部屋を適度に加湿する
  • ⑤ エアコンのきかせすぎに注意し、こたつや電気毛布の温度はひかえめに
  • ⑥ 衣類は肌にふれたときにチクチクしないものを選ぶ
  • ⑦ 下着や肌着など、肌に直接触れる衣類は、体を締め付けたり肌をこすらないサイズのものを選ぶ
  • ⑧ 素材は肌触りが柔らかなものを選ぶ(昔から、「綿が良い」といわれていますが、これはあくまでも新しい綿であって、古くなった綿はゴワゴワになるのでそうなったら新しいものにかえてください)
  • ⑨ 体が熱くなると痒くなり、ひっ掻いて湿疹をつくる原因となってしまうため、アルコールや辛い食べ物、熱い食べ物は控えめにする
  • ⑩ 汗をかいたらなるべく早めに洗い流したり、濡れタオルで押し拭きする
  • ⑪ 痒いときにはひっかかず、濡れタオルなどで軽く冷やす
  • ⑫ 手の爪は短めにし、やすりなどで滑らかにする

などの点に注意してください。

乾燥肌は放置すると掻き壊しやひどい湿疹をつくり、そこから感染症を引き起こしたり、痒さで眠れなくなったりします(乳幼児では痒みによる睡眠障害は、成長障害の原因にもなります)。日ごろから保湿・スキンケアを心がけ、健康で健やかな肌を保つようにしましょう。

健康トピックスINDEXに戻る
BACKNEXT
医師会のしごと
はじめよう脱メタボ!
広報誌ミレニアム 県民の健康増進と病気予防のためのフリーマガジンです。年間4回発行。
地区医師会
注目の健康トピックス
information
関連リンク
公益社団法人 千葉県医師会 CHIBA MEDICAL ASSOCIATION みんなで高めるいのちの価値 ~健康と福祉のかなめ~
〒260-0026千葉県千葉市中央区千葉港4-1
TEL 043-242-4271
FAX 043-246-3142