地域医療再生プログラムとは?

第4回 香取海匝保健医療圏の
「地域医療再生プログラム」その2

?再編・ネットワーク化は地域全体の診療機能の充実強化が大前提?

2011.10.19   文/桶谷仁志

 この連載では、「千葉県地域医療再生プログラム」を、わかりやすい図表を中心にして解説していきます。今回は、香取海匝保健医療圏の医療再生のための「再編・ネットワーク化」を具体的に見ていきましょう。

3つの原則によって地域住民と議会の理解を得る

 地域の自治体ごとに「総合病院」が並立し、それぞれが経営悪化に苦しむという現象は、香取海匝保健医療圏ばかりではなく、全国の郡部(人口の少ない地方・地域)に共通する悩みです。各自治体病院の役割分担を明確にし、機能再編・ネットワーク化しようという試みも各地で行われていますが、それほど大きな成果が得られるまでには至っていないようです。

 というのも、多くの機能再編・ネットワーク化の試みが、1つの病院に機能を集約し、他の病院は縮小するという考え方を基本としているために、地域住民や議会の賛同を得にくいからだと思われます。

 そこで、千葉県地域医療再生計画の場合は、以下の3つの原則を、機能再編の条件として進めていくことになりました。

①機能再編は各医療機関のダウンサイズを前提とするものではない
②個々の病院は従来とは異なる役割(機能)に変更する場合もあるが、地域全体で提供される診療機能は機能再編前より充実強化されることを目指す
③各病院の周辺地域の住民にとって、機能再編は苦痛を強いるものではなく、総じて地域住民にとってメリットをもたらすものとする。

 ――以上が3原則です。

旭中央病院に集中する理由

 では、具体的な機能再編への構想は、どのようなものなのでしょうか。

 下の図表は、圏内の自治体病院の現状を図式的に示したものです。一般外来、手術、入院、リハビリに至るまで、すべての患者が旭中央病院に一極集中し、旭中央病院の診療機能はパンク寸前です。にもかかわらず、旭中央病院から各自治体病院に患者を移動する道筋は、ほとんど整備されていません。旭中央病院を受診し、手術などを受けた旭市外からの受診者の中には、退院後に身近な地元の病院で予後の療養をしたり、在宅で通院し、リハビリしたりするほうが利便性が高いと考える人が数多くいると思われます。そのための道筋、連携の仕組みが整っていないために、すべてが旭中央病院に集中しているのです。

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