医療者から見た地域医療のいま

地域医療を支える「かかりつけ医」?わが町のお医者さん?

旧町内でただ一人の医者だったので
どんな患者さんでも診ました

2013. 01. 24   文/寺西 芝

匝瑳市は高齢の方も多いようですね。

橋場 この地区も高齢化が進んでおり、匝瑳市の高齢化率は27.4%まで上がっています。千葉県の平均が21.7%なので、県内でも高齢化が進んでいる地区だと言えますし、これからどんどん進んでいくでしょう。
 私も、現在67歳。患者さんもそうですが、医師の側も歳を取ります。この地域で一番若い医師でも50代半ばくらいです。自分も、あと10年はやれるかなと思っていますが、10年したら私も70代後半。若い先生が開業してくれればいいですが、なかなか来てくれない現状があります。10年経てば、一番若い医師も60代半ばになり、その頃には、開業医の半分くらいが70代になるのではないでしょうか。
 10年後、「団塊の世代」が70代半ばになれば、地域の医療は大変なことになります。よく言われていますが、病院ではとてもすべての患者を受け入れられないでしょうから、在宅で診ることになります。

自宅で看取ると親戚がうるさい?!

先生の患者さんでご自宅で看取られる例はあるのでしょうか。

橋場 それほど多くないですが、年間3~4人の患者さんを自宅で看取っています。月に1度は往診で伺っているわけですから、ご家族ともいろいろお話ししています。それで、ご家族も納得の上でご自宅で看取ります。ただ、亡くなられたあとに、別の地域にお住まいの親戚の方が「どうして病院にも入れずに、こんなところで死なせたんだ」と言う方もいらっしゃるようなのです。病院に連れて行けば多少寿命が伸びるかもしれないが、点滴だらけになるのでかわいそうだと家族もおっしゃる。しかし、親戚がうるさいから病院に入れるといった例もあります。実は、親戚の方々がすべて地元にいらっしゃる場合は、この地域の医療事情が分かっているから、あまり問題になりません。ただ、東京や横浜などの都市部に出られた方の中には「最後は病院に入れる」という考えの方もいるようです。

なるほど、都市部では「在宅で看取る」ことに違和感をお持ちの方もいるわけですね。

橋場 ええ。ただ、これから先は自宅で亡くなる方が増えてくる時代になります。そうなると、住民のみなさんにも意識の変化が求められるでしょう。なにも病院で亡くなるのが幸せな方法ではないことを分かってもらうことが必要なのかもしれません。ご高齢で寝たきりになり、だんだんと衰弱していく方や、がんの末期で痛み止めくらいしかできない方などは在宅のほうがずっといい。ご自宅で看取るほうがいいのではないかと思います。その際に、「かかりつけ医」の役割はますます大きくなっていくと思います。