医療者から見た地域医療のいま
旧町内でただ一人の医者だったので
どんな患者さんでも診ました
2013. 01. 24 文/寺西 芝
橋場永尚氏
古くから地域に根ざして患者さんを診ている、地元密着型の「かかりつけ医」にご登場いただき、仕事への考えや地元への思いなどを語っていただく連載。第2回は匝瑳市のはしば医院院長で匝瑳医師会会長でもある橋場永尚氏にお話を伺った。
「無医地区」になると聞いて開業
先生のご経歴を教えてください。
橋場 出身は長野県です。大学に入るために千葉に来て、1969年に千葉大学医学部を卒業しました。結婚して千葉に家を建てたものですから、それからはずっと千葉に住んでいます。卒業後は、国保匝瑳市民病院に14年間勤め、20年ほど前の1992年にこちらで開業いたしました。
こちらで開業された理由を教えてください。
橋場 20年前、この地区(旧・野栄町)には開業医が2人いらっしゃいましたが、いずれも90歳くらいの高齢でした。その方々が廃業すれば、無医地区になってしまうとの懸念があり、困っているという話を以前から聞いていました。それに、旧・八日市場の市内は開業医さんが多いので、そちらではなく、この旧・野栄町で開業することを決めたわけです。
先生のご専門は外科ですが、こちらの医院ではどういった診療をされているのでしょうか。
橋場 ここではあらゆる患者さんを診ています。旧町内ではたった一人の医者ですから、全部診ています。専門は外科でしたが、外科といっても消化器が専門だったので、内科に近い部分もあるんです。ここでは腫瘍を取る手術から、けが人の手当て、小さなおできの処理まで、ありとあらゆる治療をしています。内科の分野から、整形外科、皮膚科の治療までします。白内障なので目薬を出してくれないかと言われたこともありますよ。精神科や婦人科の患者さんまで来るんです。とにかく、ここに来れば何とかしてくれるだろうと皆さん思っているんでしょうね。こちらで分からなければ、病院に紹介してくれるだろうというのもあって、とにかくいろんな患者さんがやってきます。