医療者から見た地域医療のいま
現場の人間が集まって
必要な情報を受け渡せる「連携パス」を
2012. 11. 02 文/梅方久仁子
「今どういう状況にあるか」を
知りたい
人のネットワークが大切なのですね。ところで、連携パスは回復期側が主導するとよいというのは、なぜでしょう。
近藤 連携パスは、情報提供をスムーズにして、シームレスな医療を実現するためのものです。ところが、急性期が考える“出すべき情報”が、回復期が“必要とする情報”ではないことが、しばしばあります。急性期では、「こんな治療でこんなことをしました」という話を中心に書きたがりますが、私たち回復期は、「今どういう状況にあるか」を知りたいのです。それがわからないとシームレスな医療ができません。
そこで、現場の人間が必要とする項目をすべて盛り込んだパスシートを作ることにしました。
例えば私たちのパスシートには、不穏や大声などの問題行動があるかという項目があります。そのため、シートがファクスで届くだけで入院してもらって対応可能かどうかを判断できます。
また、経管栄養はどういうやり方をしていて、食事はどんな形態かとかいうことがわかるので、転院時に誤った食事を出す恐れがありません。入院直後から、以前と同じ医療を提供できます。体温や血圧は何度から何度と幅で書いてもらうので、入院直後に体温を測ったときに急性期病院での状態の範囲内かどうかがわかります。
このシートは、一見すると書くことが多くて大変そうですが、項目にチェックすることが中心なので、実際にはそれほど手間がかかりません。1枚を5分くらいで書けてしまうので、自由記述よりもむしろ楽だと思います。
なるほど。他にこのシートの特徴はありますか。
近藤 もう1つの大きな特徴は、職種別にシートを分けたことです。医師、看護師、理学療法士などの各職種でシートを回していると、余分な時間がかってしまいます。1職種1シートなら、それぞれの職種で書き込んで、できたものからファクスで送ってもらえばいいわけです。
脳卒中の急性期から回復期用のものでは、現在、医師、看護師、リハビリ職、ソーシャルワーカー用の4枚のシートがあります。回復期から地域に出すときには、歯科のシートもあります。今年度はもう1枚、薬剤師のシートが作られました。