医療者から見た地域医療のいま

「コンビニ受診」も「救急車の適正利用」も、
患者の目線からとらえ直すことが重要だ

2012. 01. 06   文/大森勇輝

宍倉病院 副院長 宍倉朋胤 氏

住民と協力し合い
身の丈にあった医療体制を目指す

そうした中、夜間に気軽に診療を受けようとする、いわゆる「コンビニ受診」が問題になっています。

宍倉 私は、「コンビニ受診」というのは失礼な言葉だと思っています。お母さんだって、昼は働いている方が大勢いますし、皆、生活に必死なんです。それなのに、夜間に診療を受けることを「コンビニ受診」とひと言でくくるのは、医者目線でしかないでしょう。重要なのは、「コンビニ受診」と呼ばれるような状態にお母さんたちを追い込まないことです。

 ただし、そのためには住民の皆さんの協力が必要になってきます。そもそも核家族化などにより、子どもが病気にかかった際のノウハウが今の家庭にはありません。おじいさんやおばあさんも一緒に暮らしていないことが多いです。そこで、まずは住民の方々には、さまざまな手段があることを知ってもらいたいと思います。たとえば、ちょっとした医療相談の場合は「#8000」にダイヤルすればいいとか。実際、つながりにくいとの声があったので、2011年の春には、回線数を3回線から4回線に増やしました。「#8000」は相当役に立っていると思います。

そのようなことをどうやって周知しているのでしょうか?

宍倉 具体的には、ひとつの学校につき年に1回、「子どもの救急講習」という講習会を開いています。実は、小児科において重要なのは、生まれて半年から3歳くらいまでの医療です。ところが、このことを一番伝えたいのに、その場所がない。そこで、就学前検診の時間を利用して、待っているお母さん方に伝えようと考えました。2009年、東郷小学校で試験的に開催したのを皮切りに、翌年は茂原市内の小学校、そして今年は長生郡全域の小学校へと広げています。さらに救急講習の様子をDVD化して、4カ月検診とかで見せられればとも考えています。

 また、船橋市ではAED(自動体外式除細動器)などの講習を義務教育でも受けられます。それを長生郡市でもやろうと。講師として望ましいのは学校の先生ですね。そうすれば、学校で命の大切さや、人を救うことの大切さを伝えることができます。ただ、授業のカリキュラムにいきなり入れるのは難しいので、まずは部活の合間の時間などを利用してということになるでしょう。