地域医療ニュース

第14回千葉県脳卒中連携の会

テーマ「継続のための連携」

 この会も14回目を迎えました。令和5年冬はオミクロン株の流行となり、コロナ禍、今回も対面開催は断念し、オンライン開催とさせていただきました。テーマは、「継続のための連携」としました。病院から在宅・地域に戻ると、治療やリハビリなどが中断されてしまう経験は少なくありません。「継続」することを視点とした連携について考えていきます。

【特別講演】では、上智大学総合人間科学部教授/一般社団法人未来研究所臥龍代表理事 香取照幸先生から、『2040年の医療・介護』について、ライブ講演予定でしたが、当日は機器の不調により、別日のオンデマンド配信(視聴数284)となりました。ライブ参加の皆様におかれましては、誠に申し訳ありませんでした。

 先生からは、人口減少と高齢化が同時進行する中、入院患者も高齢化すること、単身または高齢夫婦世帯が増え、それを支える家族介護があてにならなくなる現状が示されました。また「治す医療」から「治し、支える」医療への転換が求められるが、専門的な職種の連携・協働による地域包括ケアの実現が大きな課題であること。地域医療構想においては、①急性期の集約化と同時に②地域医療・在宅医療の強化―かかりつけ医機能の実装、地域密着型病院機能の明確化といった取り組みを並行していく必要があること。など、私たちの目指す姿について、俯瞰的にお話くださいました。

【シンポジウム 多職種が取り組む疾病管理】
 今回、地域で継続的に多職種連携がすすめられている疾病、疾患横断的な口腔・栄養について、シンポジウムを開催しました。
 ○心疾患:帝京大学ちば総合医療センター 第三内科 中村文隆先生からは、「多職種・地域連携で心不全パンデミックに備える」とし、高齢化と共に爆発的に増える心不全の見方や経過、また継続的な多職種・地域連携で心不全の悪化予防ができることの示唆をいただきました。
 ○骨粗鬆症:聖隷佐倉市民病院整形外科 副院長 小谷俊明先生からは「骨粗鬆症に対する病診多職種連携 ~リエゾンサービスの活用」とし、骨粗鬆症リエゾンサービスと骨粗鬆症マネージャー認定制度のご紹介がありました。二次性骨折を予防するための多職種の介入の必要性について言及され、大腿骨近位部骨折地域連携パスなども用いた地域連携も取り組みされているとのことです。
 ○糖尿病:千葉県糖尿病対策推進会議 理事 江本直也先生からは「千葉県糖尿病対策推進会議とCDE-Chibaの歩み」とし、2007年に開始された県共用医療連携パス糖尿病パスの経過について、また多職種による糖尿病対策チームの必要性を鑑み、千葉県糖尿病対策推進会議が発足し、CDE-Chiba(千葉県のlocal CDE)認定制度がはじまった経過をお話しいただきました。2022年12月現在、CDE-Chibaは1387名排出されているとのこと。沢山の多職種がCDE-Chibaをとることで、糖尿病について理解を深めていただき、地域医療に役立てていただきたいとのことでした。
 ○口腔:千葉県歯科医師会 会長 高原正明先生から「全身疾患に関わる歯科疾患と歯科的連携・管理」とし、心疾患・骨粗鬆症と治療薬、糖尿病と歯周病、オーラルフレイルなど全身疾患との関連、口腔の健康管理をすることの重要性が提起されました。
 ○栄養:帝京大学ちば総合医療センター 栄養部 鯨岡春生さまから「多職種連携のおける管理栄養士の関わりについて」とし、生活習慣病における栄養、摂食嚥下を考慮した対応が必要となっていることなどの現状と共に、栄養パスシートの利用、NST(栄養サポートチーム)の有用性と地域との継続性を視野に入れた「認定管理栄養士制度」などが紹介されました。

【分科会報告】 第一部で開催された分科会から報告をいただきました。
 「リハビリテーション職分科会」からは、テーマを「連携と継続 循環器リハ・運転支援」とし、循環器リハを行っている急性期・回復期リハからの現状と課題について、また運転支援についてのアンケート結果について報告がありました。

 「入退院支援分科会」では、千葉県地域生活連携シートの実態調査報告、千葉大学医学部附属病院患者支援部が作成したアプリの紹介などがありました。

 「看護職分科会」では、テーマを「継続のための連携」~より良い栄養管理の継続とその課題~脳卒中地域医療連携パス 連携シートの活用に向むけて~とし、意見交換がなされました。

 「医療ソーシャルワーカー分科会」では、テーマを「身寄りがない方への支援~アンケート調査・グループワークから見える実態」とし、ソーシャルワークに難渋するケース「身寄りのいない方」「成年後見制度」についてのアンケート報告とグループワークが行われました。

 「薬剤師分科会」では、テーマを「高齢者における栄養管理と薬剤」とし、多剤処方(ポリファーマシー)と低栄養リスク、身体機能低下や認知症のリスクが指摘されました。特に抗精神薬などの不適切処方が問題とのことです。栄養スクリーニングとして、下腿周囲長の低下などが紹介されました。

 「栄養士分科会」では、症例検討が行われました。症例は急性期から回復期への連携、脳卒中連携、心不全連携など。

 「医師分科会」では、テーマを「就労支援」とし、ミニレクチャーが行われました。「就労支援」千葉県千葉リハビリテーションセンター 菊地尚久先生、「両立支援」千葉産業保健総合支援センター 仁科智好さまのお二人から講演いただきました。また並行で、グループワークとして症例検討が行われ、カンファレンス結果についても発表がなされました。

【総括】千葉県脳卒中等連携意見交換会代表の古口徳雄先生より、千葉県共用医療連携パスの経過、CAMP-Sの利用実績の他、千葉県循環器病対策推進計画の概要、念願の脳卒中患者支援手帳などのご紹介があり、「千葉県には継続のための強い連携がある」という言葉で締めくくりとなりました。

 昨年度に引き続きオンライン開催となりましたが、411アカウントの参加登録をいただき、多数の方々にご参加いただきました。ありがとうございました。
 この会は湾岸リハビリテーション病院を事務局とする意見交換会を準備会に位置づけ開催されています。御尽力くださいました沢山の関係者の方々、ご講演、シンポジウムをお受けくださいました方々には、この場をお借りしまして厚く御礼を申し上げます。

千葉県医師会理事 松岡かおり

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 第14回千葉県脳卒中等連携の会 冊子(1.64MB)
 講演「千葉県脳卒中等連携の会~総括~」(2.97MB)