地域医療ニュース
千葉市の医療について考える連続シンポジウム第1回
「千葉市の医療の“いま”を考えよう ?救急の現場から見えてくるもの?」が開催
2013. 04.03 文/梅方久仁子
2.医療提供体制改革の方向
医療提供体制改革は、どういう方向へ向かっているのか。3つの方向がある。
まず1つ目は、資本集約的な医療サービスから、より労働集約的な方向へ向かっていることだ。これは病床数や設備よりも医療関係者の数を増やしていくことであるが、このことにより人件費が増え、必然的に医療費と介護費が増えるため、その費用をどうまかなうかが課題だ。
2つ目は、「地域完結型医療」の方向へ向かっていることだ。これは病院ごとに役割分担して地域全体で患者を診ていく医療のことである。熊本県に素晴らしい例があるが、これはあくまで1つのモデルであって全国一律・同じ方法で達成されるものではなく、それぞれの地域に適合した解を探る必要がある。
最後は、情報開示によって患者が医療機関を選択する方向へ向かっていることだ。米国では厚労省にあたる機関が、病院などのサービスを評価しランク付けしているほど情報開示が進んでいる。日本では、情報開示の具体的内容と方法をどうするかが課題だ。
なお、2008年4月に施行された新医療計画は、5年後の見直しがある。2013年からの次期医療計画では、これまでの4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)の重視に精神医療を加えて5疾病にすること、東日本大震災を受けて災害医療を見直すこと、在宅医療の重視などが盛り込まれる予定だ。
3.医療提供体制の長期ビジョンと地域医療
将来の医療体制について、団塊の世代が後期高齢者になる2025年を見据えて、2025年ビジョンというものが課題となっている。
政府はこれまで2つのビジョンを示している。1つは、2008年11月に自民・公明政権下で行われた「社会保障国民会議」の最終報告、もう1つが2011年6月に民主党政権で見直された「医療・介護に係る長期推計」だ。
「社会保障国民会議」の最終報告で示された長期ビジョンでは、労働集約型で地域完結型の医療に改革する中で、医療・介護費用が増大すると初めて示された。これまで入院日数を減らせば医療費を削減できるとされてきたが、在宅医療や在宅ケアを行うには、現在の1.7倍から1.8倍の医療・介護従事者が必要。大幅に人件費が増えるため、たとえ効率化を進めても費用の増大は避けられない。2011年の「医療・介護に係る長期推計」も、この点はほぼ同様だ。
今後、国民が政策を選択するにあたって、留意するポイントを挙げておく。政府は、長期ビジョンで「2025年はどうなっているか」の3つのシナリオを作っており、それぞれ医療・介護サービスの充実度によりかかる費用が違ってくる。どのシナリオを選ぶかは、国民が決めることだ。今後問題になってくるのは、この医療費増に対応するために増税をするかしないか、する場合にはその規模とタイミング、保険料の引き上げをどうするかだ。
※参考資料
社会保障国民会議における検討に資するために行う医療・介護費用のシミュレーション(クリックするとPDF
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