地域医療ニュース

「本当に必要なときに救急車が来ない」という事態を避けるために、みんなができることは?

2013. 02.14   文/梅方久仁子

 年間8000件を平均すると1日に約22件だが、多いときには1日35回くらいになる。救急車は1回出動すると、簡単には戻ってこられない。遠方の病院に搬送すれば、3時間くらいかかることもある。救急車が出動している間に新たな要請があれば、隣町から出動し、隣町も出動しているとさらにその隣町からになる。最近では、8台の救急車がすべて出払ってしまうことも珍しくない。最も忙しい中央消防隊の平均稼働時間は8時間で、1日の3分の1は出動中という状態だ。一番忙しいときは、1日14時間も出動していることもある。

救急車の到着までに時間がかかる

 長生郡市で2011年度に救急車の到着までにかかった時間は、平均10分強だった。全国平均では8分強なので、かなり長い。しかもこれは平均なので、実際にはもっとかかることがある。2011年でいちばん長いときには約50分。30分から40分かかることは、それほど珍しくなくなっている。心臓発作で倒れたときや交通事故で大けがをしたときに、救急車が来るまで50分もかかっていては、助かる命も助からない。

 現在、長生郡市の管内には、重症患者に対応できる3次救急医療機関がない。千葉県にはドクターヘリが2機あり、重症患者にはドクターヘリを要請している。しかし、夜間などドクターヘリの運行時間外は、片道1時間くらいかけて管外の病院に搬送するしかない。これも救急車の稼働時間を長くしている理由の1つだ。
 幸い2013年度に圏央道が開通するので、地域によってはこれまで1時間くらいだったところが30分程度で済むようになる。また、2014年4月には東金市に3次救急医療に対応する東千葉メディカルセンターが開院する。そうなれば、遠方への搬送は減らせそうだ。

 しかし、もし今後も出動要請が増え続けるとなると、安心してはいられない。

搬送患者の4割が軽症患者

 人口は増えていないのに救急出動件数が増えるのは、なぜだろう。原因の1つに、人口の高齢化がある。高齢者は、どうしても身体のあちこちに不具合が出やすくなるからだ。それから、核家族化もある。子どもの病気では、以前は祖父母が年寄りの知恵で判断できたことが、経験がない親は心配で救急車を呼ぶ傾向にある。また、高齢者だけの世帯では、身近に頼れる人がいないと不安で救急車に頼る傾向があるようだ。