健康トピックス

2023.06.30

口まわりや陰部まわりのチクチクする水ぶくれ「単純ヘルペス」

単純ヘルペスの症状

症状の特徴は、ピリピリ・チクチクとした不快な「痛み」や「むず痒さ」が最初に起こり(初期症状)、次にその部位の皮膚に赤みが出現。数日のうちにそのなかに小さな水ぶくれが出現してきます。水ぶくれの大きさはほぼ同じくらいに揃った大きさで、でき始めのうちは中心部が臍のように凹んでいるのが特徴です。その後水ぶくれは融合して大きな水ぶくれとなったり、血や膿の水ぶくれとなり、やがてびらんや皮膚潰瘍になり、最後はかさぶたや瘢痕となって治ってゆきます。

初感染時の単純ヘルペスウイルス感染症が治癒した後も、ウイルスそのものは神経節細胞の中で遺伝子として残留し、生涯その人の体のなかに存在し続けます。神経節細胞に潜伏しているウイルスを完全になくす治療法は2023年4月の時点でいまだ確立されていません。そして風邪、栄養失調や月経、強い日光曝露、ケガ、過度なストレス負荷などで体が弱ったり、免疫力が低下したときにウイルスが再活性化し、単純ヘルペス感染症の再発を繰り返すのです。

なお、免疫力が著しく経過している人では、脳炎、髄膜炎、肺炎、食道炎などの重症合併症をきたすことがあるため注意が必要です。

その他、症状がきちんとコントロールされていないアトピー性皮膚炎などのように皮膚バリア機能が障害されている人では、カポジ水痘様発疹症といって、広範囲に広がる単純ヘルペスをきたすことがあります。

単純ヘルペスの治療

ヘルペスウイルスの増殖を抑える抗ヘルペスウイルス薬の内服が基本です。重症例では入院のうえ、抗ヘルペスウイルス薬の点滴を行う場合があります。なお、ごく軽症の場合は抗ヘルペスウイルス薬の塗り薬が使われることもあります。

先述のように、ウイルスを体内から無くす治療は今のところなく、あくまでも『増殖を抑える』薬ですので、発症からなるべく早いうちに服用することが大切です。

なお、薬を服用しても最初の数日間は皮疹の新生・拡大をみることがありますが、心配いりません。

その他 特殊な内服治療として、陰部ヘルペスの再発抑制のため毎日1錠の飲み薬を続けて内服するやり方があります。また、2023年3月より「あらかじめ処方された薬を、単純ヘルペスの初期症状が出現したときに患者さんの判断でなるべく早く(6時間以内が望ましい)決められた特殊なのみ方で内服する」治療法がヘルペスの発症部位に関係なく、保険診療で行えるようになりました※。※ PIT(Patient Initiated Therapy)

なお、疼痛に対しても消炎鎮痛薬などで早期から治療を行うことが痛みを長引かせないために大切です。

再発抑制にむけた日常生活の注意点

  • ● 栄養のバランスがとれた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、疲労やストレスをため込まないようにしましょう。
  • ● 日焼け止めなどで紫外線対策を。とくに体調がすぐれないときや疲れがたまっているときは、強い紫外線を浴びることは避けましょう。
  • ● ヘルペスがよく出る部位は普段からスキンケアを行い、清潔を心がけましょう。

症状が出ているときの日常生活の注意点

  • ● 水ぶくれをわざわざ破ったり、かさぶたを無理にとらないようにしましょう。
  • ● 患部は最低1日1回は石鹸やボディーソープを泡立ててやさしく洗浄し、洗い流しましょう。ただし、お化粧やスキンケアは治るまでは避けた方がよいでしょう。なお、湯船の湯でヘルペスウイルスが感染することは通常ほとんどないとされています。心配であれば最後にシャワーで洗い流しましょう。
  • ● 水ぶくれやびらんなどに触った手は、石鹸で洗いましょう。
  • ● 口唇ヘルペスの場合、皮疹がかさぶたになるまではマスクを着用することも感染対策に有効です。
  • ● 患部に直接・間接的に触れた食器や箸、スプーン、フォーク、ナイフ等や患部を拭いたタオル等は、洗剤で洗浄・洗濯せずに共用することは避けましょう。(洗浄や洗濯、乾燥でウイルスは除去されます)
  • ● 乳児との接触はできる限りひかえましょう。接触する際は手を洗ってからにしましょう。また、患部が乳児に触れないように注意しましょう。
  • ● 臀部にヘルペスがでている場合は、ウイルスが便座に付着することがあるので、エタノール消毒をおこなったり、患部が便座に直接触れないように工夫しましょう。
  • ● ヘルペスは皮膚や粘膜の接触で感染しますので、症状がでているときは性行為などの密な接触を控えましょう。なお、陰部ヘルペスのある方では、症状が出ていないときでも性交時にはコンドームを使用することが相手への感染リスクを軽減します。
  • ● 陰部ヘルペスの方も、もちろん妊娠・出産は可能です。ただし、分娩時にヘルペスの症状がでている場合などは児への影響が出ることがありますので、あらかじめ産婦人科医に相談してください。
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