2021.06.23
百日咳とは
百日咳は、主に飛沫感染により感染します。百日咳菌が鼻やのど、気管・気管支の粘膜に侵食し、掃除をする繊毛の活動を阻害する毒素を産出します。すると気道の分泌物を排除する機能がうまく働かなくなり、特有のけいれん性の咳発作をもたらします。
どの年代でも感染しますが、学童期が最も多く、乳児期にもピークがあります。乳児が感染すると重篤化しやすく、けいれんや肺炎、脳炎を合併し、死に至る危険性も高まるので注意が必要です。
感染原因と症状
すでに感染している人の咳やくしゃみなどからうつる飛沫感染、分泌物に触れたことによる接触感染から感染します。その症状は、三期に分類することができます。
■乳幼児の場合
①カタル期 (約2週間) |
・7~10日の潜伏期間を経て発症 ・感染力が最も強い時期 ・普通の風邪の症状があらわれる |
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②痙咳期 (けいがいき) (約2週間) |
・発熱はなく、あっても微熱程度 ・百日咳特有の発作性けいれん性の咳に変わる ・短い咳が連続的に起こり、続いて、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音が出る ・嘔吐を伴う場合がある ・夜間に咳が連続的に出る ・無呼吸発作、けいれんを引き起こす場合がある |
③回復期 (約2~3週間) |
・次第に発作的な咳が治まり、症状が緩和してくる ・約2~3ヵ月で回復する |
■成人の場合
成人の場合、咳が長期にわたって持続はしますが、百日咳特有の発作性の咳の症状があらわれません。そのため咳がひどくても他の疾患と誤診されることもあり注意が必要です。軽症でも菌の排出はあるので、乳幼児やお年寄りなど免疫力が弱まっている人の近くにいると、気がつかないうちにうつしてしまう可能性があります。
治療と予防法
治療薬としては、カタル期においてマクロライド系抗菌薬の使用が有効とされています。また、咳がひどい場合には鎮咳去痰剤(ちんがいきょたんざい)、気管支拡張剤などが使われることもあります。
予防策としては、百日咳・破傷風・ジフテリア・ポリオの4種が混ざった、四種混合ワクチンが主流となっています。重症化しやすく、死亡率の高い乳児期の子どもを、感染から守ることが大切です。
■標準的な接種期間・回数
・1期:初回接種は生後3ヵ月から、20~56日までの間隔をおいて3回。
追加接種については3回目の接種を行ってから6ヵ月以上の間隔(標準的には12~18ヵ月の間隔)をおいて1回の接種を行います。
・2期:11~12歳の期間に1回の接種を行います。
百日咳は、周囲の人にも感染しうる病気です。
特に、免疫力の弱い乳幼児にはとても危険な病気の1つです。熱がないのに咳が強い、咳が長引く場合(特に成人は乳幼児と比べ疾患の鑑別が難しいので、2週間以上咳が続く場合)は、まずはかかりつけ医に相談しましょう。感染したら、職場や学校を休み、外出を控えることも二次感染予防となります。また、うがいや手洗い、マスクの着用などで飛沫感染を予防して、周囲への感染拡大を防ぐことも大切です。