2020.07.02
感染症とその対策
腎臓は、全身の血液を集めて血液中にある老廃物や、尿毒症物質を除去し、余分な水分とともに尿を作る働きをしています。腎臓で作られた尿を集めて、尿管へ送る部分を腎盂と呼び、腎臓で細菌が増加し、炎症が起こると腎盂腎炎となります。感染の原因となる細菌は、主に大腸菌が多く、他にはブドウ球菌などがあります。多くの場合、細菌は尿道から膀胱、尿管、腎盂へと侵入します。尿の流れが悪くなると細菌が上にのぼりやすくなり感染します。腎盂腎炎は、女性のほうが男性より尿道が短いこと、膣や肛門が外尿道口と近いことなどが理由で、女性の方がかかりやすい病気です。
腎盂腎炎の症状は、背中を殴られたような痛み、夕方から朝方にかけての高熱、吐き気やおう吐などがあります。そのほかに排尿時の痛みや残尿感、頻尿、尿の混濁など、膀胱炎と同様の症状がありますが、膀胱炎では発熱することは少ないため、発熱した場合には、注意が必要です。適切な処置をしていながら回復が遅れる場合や、腎盂腎炎を繰り返す場合には、精密検査を必要とすることもあります。また腎盂腎炎は、無理をすると重症化し、菌血症や肺血症になる場合があります。さらに細菌に対する抵抗力が落ちる糖尿病や、ステロイド剤、抗がん剤などによって免疫力が低下している人も腎盂腎炎を起こしやすくなります。症状が疑われる場合には、早めに医療機関を受診し安静を保つことが大切です。
また、腎盂腎炎は再発することがあり、先天的な奇形によって尿管に狭い部分があると、回復が遅れて繰り返すことがあります。
腎盂腎炎の種類
腎盂腎炎は、細菌による感染症ですが、本来健康な人の膀胱から尿管、腎盂に細菌は存在しません。何らかの原因で侵入して炎症を起こしています。腎盂腎炎は、細菌の侵入経路によって、細菌が外部から尿道をさかのぼることで起きる感染「上行性感染」、尿道から膀胱、尿管、腎盂の周囲にあるリンパ腺からの感染である「リンパ行性感染」、体の別の感染部位から、血液の流れを通じた感染である「血行性感染」の大きく3つの感染タイプに分けることができます。また、腎盂腎炎には急性と慢性があります。ほとんどの場合が急性腎盂腎炎ですが、十分に治療をしなければ慢性腎盂腎炎に移行する可能性があるので注意が必要です。
1.急性腎盂腎炎 |
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発熱、悪寒、震え、腰背部や脇腹の痛み、吐き気・おう吐などの症状があります。短時間で高熱になることもあります。高熱が出ても肺炎や扁桃腺炎に比べて全身状態は悪くありません。また頻繁に尿意を催し、尿の回数が多くなりますが、量は少なく、白血球が混ざるため白く濁ります。排尿時の痛みや残尿感など膀胱炎のような症状もあらわれます。 |
2.慢性腎盂腎炎 |
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症状はさまざまですが、活動性の慢性腎盂腎炎の場合は、急性腎盂腎炎と同じような症状があらわれることがあります。また、非活動性の場合には、多くは微熱やだるさを感じ、食欲不振、吐き気などもありますが、自覚症状がない場合もあり、慢性腎盂炎を判別するのは難しいといわれています。 |
腎盂腎炎の治療と予防
腎盂腎炎の予防のためには、尿がしたいと感じたら早めにトイレに行く、排尿を我慢しない、水分補給をしっかりとして、お茶などをできるだけ飲むようにすることが大切です。女性の場合は、外陰部を清潔に保つ、排尿後や排便後の拭き方などを注意しましょう。
治療は基本、抗生物質を使用します。場合によっては、入院をしなければならないこともあるため、きちんと治療を行うことが重要です。症状が疑われる場合には、医療機関に相談し、適切な検査を受けましょう。