2019.10.02
手根管症候群とは
手根管症候群は、手の親指から薬指にしびれや痛みを感じる手の病気です。手のひらの付け根に、手首の骨と靭帯に囲まれている「手根管」というトンネルがあります。手根管の中を9本の腱と正中神経(手首の屈曲や手指の屈曲、親指のつけ根の筋肉などを支配している神経)が通っており、腱を覆う膜やそれぞれの腱を連結している滑膜が炎症を起こし、腫れて厚くなると、正中神経が圧迫され指にしびれが起こり、手根管症候群となります。はっきりした原因がない特発性のものが多く、妊娠・出産期や更年期の女性に発症しやすいです。特発性の手根管症候群は、女性ホルモンの乱れによる滑膜性の腱鞘のむくみによって、手根管の内圧が上がり、圧迫に弱い正中神経が扁平化することが原因と考えられています。そのほかにも、骨折などのけがをしたり、仕事やスポーツで手を使いすぎたり、透析をしている人などにも生じやすいです。これらが原因によるむくみなども同様に、手根管症候群を発症します。また、腫瘍や腫瘤などによっても手根管症候群が発症することがあります。
手根管症候群の症状
手根管症候群は、小指以外にしびれや痛みを感じる、夜間や早朝にしびれや痛みが強くなる、手を振るとしびれや痛みが緩和するなどの症状が起きます。正中神経は、手のひら側の親指から薬指の親指側半分までの感覚と、親指の動きなどだけを司っているため、小指には症状が起きません。
病気が進行すると、親指の付け根が痩せていきます。これは、筋肉に達する神経までが障害され、親指の付け根の筋肉が萎縮してしまうため、親指と人差し指など、ほかの指を向かい合わせるような動作が難しく成ったり、細かいものがつまみにくくなります。
手のしびれは、脳卒中や糖尿病、首の病気など、別の病気が原因で起こることがあります。そこで、手のしびれの原因が手根管症候群か確かめるために、あえて手首を圧迫し、しびれを起こしやすくするファーレンテストというセルフチェックの方法があります。
【ファーレンテスト】
1. 体の正面で、手のひらを開いた状態で手首を直角に曲げ、両手の甲を合わせます 2. 1分間その状態を保ちます 1分以内に手がしびれたり、もともとあったしびれが強くなったりする場合は、手根管症候群が疑われます。しびれが強くなる場合はすぐにテストをやめてください。 |
手根管症候群の予防・治療法
手根管症候群の治療法は、安静にすることと薬での治療です。軽傷の場合は、1回~数回のステロイド薬などによる注射と手首の安静で症状が治まることが多いですが、重症化した場合には手術が必要です。症状を改善するためには、できるだけ手首の刺激を少なくすることが大切です。安静を保つためには、2~3か月の間、装具を装着する場合もあります。薬には痛み止めとビタミン剤があり、直接注射して炎症を抑え、痛みをとることもあります。薬や装具などでも効果があらわれない場合は、手術が検討されます。まずは症状が疑われる場合には、専門医に相談し、適切な治療を受けましょう。