地域医療ニュース

千葉市の医療について考える連続シンポジウム第2回
「千葉市の医療の“これから”を考えよう ?超高齢社会を乗り切るために?」が開催

2013. 04.04   文/梅方久仁子

自宅で最期を迎えたい人が増えている

千葉大学医学部附属病院副病院長・高齢社会医療政策研究部長 
高林 克日己教授

 次にパネルディスカッションが行われた。
 コーディネーターは千葉大学医学部附属病院副病院長・高齢社会医療政策研究部長・高林克日己教授。パネリストは、基調講演を行った、さくさべ坂通り診療所院長の大岩孝司氏に、千葉市立海浜病院消化器外科医師・緩和ケアサポートチームの塩原正之氏と東千葉ハッピータウンの会代表・下坂貞夫氏が加わった3名だ。

 最初に、高林氏が高齢化社会の到来とそれに伴う在宅医療の推進の必要性について述べた。
 関東圏には高度経済成長期にベッドタウンとして若い世代が住み始めた地域が多数あり、そこでは急速に高齢化が進んでいる。高齢化の影響は地域の医療に大きな影響を与える。例えば千葉市では、2030年には患者数が現在の1.5倍から1.6倍、死亡者数は2倍になり、病床が不足する。
 昔は自宅で亡くなるのが一般的だった。1950年には病院で亡くなる人は11%だったが、今は80%以上となっており、病院で亡くなるのが一般的。今後、病床に不足が生じた場合、どこで看取るのかが大きな問題になってくる。つまり、多くの人の「死に場所」がなくなることを意味する。
 海外の例を見ると、4割前後が医療機関ではない生活の場で最期を迎えている。最近の千葉県のアンケート調査結果でも、自宅で最期を迎えたいという人が31%いるという。病床が足りない現実に直面した時、調査結果のように「自宅で最期を迎える」方向への転換も考えるべきだろう。
 そのためには、人々の医療への考え方も変わるべきだ。以前は若い人が亡くなるのをなんとか救おうとするのが医療だったが、今後、長生きをした高齢者が大勢亡くなっていく時代に突入するとき、「医療」は昔と同じ考え方でいいのだろうか。
 医療への考えを改め、病院ではなく自宅で最期を迎えるためには在宅医療を推進するしかない。そのためにはたくさんの在宅医を育てる必要がある。

東京通勤圏2000万人口圏では空前絶後の高齢化を経験している。(クリックすると拡大します)