浦安市医師会

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健康コラム2011年

長引くセキについて □ワキの汗 □鼻水と中耳炎 □子宮頸がんと予防ワクチン


長引くセキについて

最近「風邪のセキが長引いて困る」と話している人をよく見かけます。風邪はライノウイルスなどのウイルス感染ですので多くは1~2週間前後で軽快しますので3週間以上続き場合は別の原因を考えなくてはなりません。肺炎・結核などの感染症・肺癌・間質性肺炎という重病からのセキは早期に除外しなくてはなりません。しかし最近3週間以上セキの80%以上が喘息・セキ喘息・アトピー性セキを中心とするアレルギー性のセキであり、その他副鼻腔炎を含めた後鼻漏からのセキ、逆流性食道炎からのセキ、ある種の降圧剤によるセキ、ストレスからくる心因性のセキも考えられます。喘息は気道狭窄により聴診にて喘鳴音が聴かれ、子供のみならず何歳でも発症します。セキ喘息は気道のアレルギー性炎症は生じていますが喘息ほど気道がむくんでいないため喘鳴は聴かれませんが、狭窄はあるため喘息同様気管支拡張剤に反応します。アトピー性セキは気道の太いところに炎症が生じ、セキが生じますが、気管支拡張剤に反応しにくい病態です。アレルギー性セキの治療としてはセキ止めでなく、吸入ステロイド剤が中心となり、鼻炎による後鼻漏を伴うことも多くアレルギーを抑える抗ヒスタミン剤・抗ロイコトリエン剤、喘息・セキ喘息には気管支拡張剤が用いられます。

セキは一つの病態で説明できる場合は少なく、いろいろな病態が組み合わさって生じており、一個人でも咳の主となる病態が時によって違う場合もあり、原因にあわせて治療しなければなりません。

【いとう内科呼吸器科クリニック 院長 伊藤 敏雄】


ワキの汗

ワキにはエクリン汗腺とアポクリン汗腺という2種類の汗を作る器官があります。  エクリン汗腺は全身にあり、皮膚へ直接分泌される水っぽい汗で、体温が上がると発汗して熱を下げる働きがあります。また、緊張した時や辛いものを食べた時などにも分泌されます。この汗が多いと「多汗症」です。治療には塩化アルミニウムを含んだ汗止めのローションの外用、ボツリヌス菌毒素の注射、交感神経切断術などがあります。
一方、アポクリン腺はワキ、外耳道、陰部など限られたところにあり、思春期とともに発達してきます。毛穴から皮膚へと分泌される粘々とした汗です。分泌された汗は皮膚に常在する細菌よって分解され臭いの原因となります。この汗が多いと「わきが」といいます。わきがには特有の汗の臭いがあります。また、シャツのワキが黄色くなったり耳垢がベトベトしていたりということもあります。

アポクリン腺の数が多いと臭いが強くなります。
これには人種差があり欧米人の方が数が多いです。さらに、この臭いの感じ方にも人種差があります。欧米では異性を引き付ける効果があるとされていますが、日本人は潔癖症なのか僅かな臭いでも気にする方が多いようです。清潔に保ち抗菌作用のあるクリームを使うだけでも臭いは減ってはきますが、根本的には手術でアポクリン汗腺を切除します。手術には様々な方法がありますが大体7,8割は切除できます。

【マリンクリニック 三橋 清】


鼻水と中耳炎

日常診療中に滲出性中耳炎のお子さんをよく見かけます。特に就学前のお子さんは症状に慣れてしまっている為か親に訴えることなく、鼻水で耳鼻科を受診したときに初めて知らされるケースが多く感じられます。
お子さんの症状を代弁して表現すると、耳が詰まった感じ、聞こえずらいといったことです。
聞こえずらいと言っても、ささやき声、時計の秒針が聞こえないといった些細なものなので親が症状に気がつかないことが多いようです。しかしこの時期にお子さんにいかに多くの音を聞かせて聴覚を発達させるかが重要で、大人になったときの聴覚の成熟に少なからず影響すると考えます。

では、この滲出性中耳炎はどうやって発症するか。多くは鼻水が出ているにもかかわらず、鼻をかまなかったり、鼻を吸い取ってあげなかったために発症するケースが殆どです。鼻水が鼻の奥に停滞していると本来自然に耳抜きをして鼓膜の内側との換気をおこなうはずの管の出口で塞がれてしまうため鼓膜の内側の空洞(中耳)が孤立してしまい水が溜まってしまいます。決してシャワーやプールの水が入ったとかの耳の外からの水では有りません。
予防、治療はどうするのか。とにもかくにも、鼻の奥に鼻水を貯めないこと、すなわちよく鼻をかむこと、まだかめないお子さんには親がこまめに吸い取ってあげることに尽きると思います。もちろん日中保育園等で吸ってあげられないこともあるかと思いますが、一緒に居る時間だけでもこまめに鼻水を吸いとってあげて下さい。

【浦安耳鼻咽喉科 小野 健一】


子宮頸がんと予防ワクチン

子宮頸がんとは女性にしかない特別な臓器である子宮の入り口付近(子宮頸部)にできる女性のがんの中では乳がんについで2番目に多いがんです。その原因はほぼ100%がヒトパピローマウィルス(HPV)というウィルス感染であることが明らかになっています。このHPVは主に性行為で感染しますが、どこにでもいるウィルスなので、皆さんが風邪にかかるように日常の生活でもHPVに感染することもあります。そのほとんどは気づかないうちに消えてしまいますが、ごく稀に持続感染といってHPVが体内に長く住みついて、子宮頸がんに進行する可能性が出てくるわけです。

このHPVを発見したドイツがん研究センターのハラルド・ハウゼン教授には、2008年度のノーベル生理学医学賞が授与されました。この研究成果をもとに予防ワクチンが開発され、現在100カ国以上で接種されています。
日本では2009年にHPV予防ワクチンが正式に承認され、浦安市でも2010年8月からは中学1~3年生の女子に対して全額公費補助がスタートしました。 また2011年4月からは高校1年生~20歳までの女性にも一部補助されるようになりました。
このワクチンはとても安全性が高いワクチンですが、半年の間に3回接種する必要があります。しかし、これだけですべてのHPV感染を完全に防ぐことはできません。自覚症状がないのが子宮頸がんの特徴ですので、年に1度は子宮頸がん検診を欠かさずに受けるように心がけることも大切です。

【平山レディースクリニック 平山 博章】

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