地域医療ニュース

第7回千葉県脳卒中連携の会について

2016.6.20   文/千葉県医師会理事 松岡かおり

 本年度も千葉県・千葉県医師会・千葉県共用脳卒中地域医療連携パス管理病院協議会の共催により第7回千葉県脳卒中連携の会を開催することができました。毎年この季節、雪が心配されますが、今回は強風の中の開催になり、一部列車が止まったところもあったようですが、通常の開催とさせていただきました。

 この会は、全県共用の医療連携パスを考える所から始まっていますが、昨年度から3年計画で、地域包括ケアシステムの核の一つとなる医療機関と在宅を繋げる入退院支援に視点を置いて展開しています。

 今回はメインテーマを「地域連携の中の入退院支援」とし、例年通り、午前は専門職ごとに分かれての分科会、午後は全体会と分科会報告という構成としました。

 午前に行われた第一部では、4年前から始まったメディカルスタッフ・ケアマネ等向けの研修会が行われました。今回は、薬剤師からは服薬管理や服薬方法・リスクなどについて、理学療法士からはリハビリの本質的な部分、目標設定としての「してみたい暮らし」を構築するためのリハビリについての話をいただきました。並行して行われた職種別分科会では看護職・薬剤師、・栄養士・リハ職・MSWに分かれて退院支援に関わる問題点の共有から対策、ツールとしての共用パスの検討などが行われました。MSW部会では実質的なケアマネジャーとの連携をとるための個別のグループワークも行われています。医師部会と歯科医師部会は合同で、昨年度から引き続き「実践!模擬多職種退院カンファレンス」を開催しました。このグループワークでは、脳卒中がベースにある入退院を繰り返す誤嚥性肺炎の方をどのように支えていくか、病院と地域のスタッフが一緒に考える機会となりました。昨年は参加者以外に多くの見学者が来ていただき足の踏み場の無い状態になりましたので、今回は広い会場でグループ数を少なくしました。グループワーク参加者は病院側48人、在宅側44人で見学者を合わせると合計200人を超える方々がこの会場に来ていただき、熱い討論を行いました。この資料については公表しますので、ぜひ地域でもご活用いただければと思います。

 第二部では、主催者である千葉県健康福祉部川嶋博之次長・千葉県医師会土橋正彦副会長の挨拶の後、「退院支援事業報告」「基調講演」「シンポジウム」「分科会報告」を行いました。「退院支援事業報告」では、県行政から今回の事業内容、県医師会から昨年度行われた実態調査のまとめ、退院支援モデル地区である君津木更津医師会、市原市医師会から経過報告がありました。

 「基調講演」は四国医療産業研究所所長の櫃本 真聿先生のご講演です。元愛媛大学病院総合診療サポートセンター長の経験を生かし、全国を飛び回っているとのこと。『地域包括ケア時代』生活に戻すためのチーム医療~生活を分断しない医療連携へ~のお話しをいただきました。人間の死亡率は100%であり、住民の心構えとして「自分らしい生き方・死に方」を実現するにはどうするのかを探る必要があり、医療者にはその心構え(覚悟)の基盤を支える視点が必要であること。入院の目的は疾病をよくして、生活に戻るためのものであり、「生活を分断しない医療」が大事であり、その中で看護師の役割は大きいこと。地域の医療と介護は共助の関係であり、かかりつけのネットワークを構築強化する必要があること。「誰かのために何かをしたい」という元気な高齢者が地域を支えていけるような仕組みが必要なこと。ただし、物事を進める時には手段に走ることが多くなってしまうため、目的を明確化し、共有することが大事。など、重要なキーワードをたくさんいただきました。櫃本先生には改めて感謝したいと思います。

 「シンポジウム」では『ときどき入院、ほぼ在宅』―私たちにできること―というテーマで討論しました。千葉ろうさい病院(急性期)の小沢先生からは脳卒中患者さんの再入院に関する具体的なデータについて、新東京病院(急性期)の西先生からは、入院患者さんのリハの早期介入の試みについて、かかりつけ医の和田先生からは退院の問題点の提起と松戸市の試みについて、訪問看護ステーションの山崎さんからは生活を支える視点を持つことの重要性と病院側と在宅側が目標を共有する必要性について、ケアマネジャーの井上さんからは情報の伝達と共有の難しさと地域連携シートの活用についての話がありました。討論は櫃本先生も加わっていただき、活発な意見交換となりました。先生からはこの取り組みは先進的であり、今後も発展を期待するとのお言葉をいただきました。会場の皆様には基調講演から通じて、今後地域で生かせるものを持っていただけたのではないかと思います。

 終りに分科会報告と全体の総括が行われました。退院支援の意味合いを確認し、幕となりました。

 一日という長い会でしたが、総勢702名の参加でした。概算で医師72名、薬剤師43名、看護職139名、リハ職156名、福祉職43名、MSW102名をはじめ20職種の方々にご参加いただきました。本当にありがとうございました。

 最後になりますが、この会は有志として多職種が集う脳卒中意見交換会が中心となって、開催されています。関係者の方々には改めてこの場をお借りしまして御礼を申しあげます。

平成28年3月
千葉県医師会理事 松岡かおり

PDFファイルダウンロード

第7回千葉県脳卒中連携の会 冊子(6.65MB)
 第7回千葉県脳卒中連携の会 模擬カンファレンス配布資料(5.19MB)
 基調講演『地域包括ケア時代』生活に戻すためのチーム医療
 ~生活を分断しない医療連携へ~(スライド)
(6.11MB)
 当日の様子(写真)(558KB)
 脳卒中患者退院支援実態調査報告書 (2.44MB)