地域医療ニュース

地域の高齢化を医療連携でどう乗り切るか?
旭中央病院で2度目の地域医療連携懇談会開催

2013. 06.20   文/大森勇輝

 千葉県旭市にある「総合病院 国保旭中央病院(以下、旭中央病院)」は、日本でもトップクラスの規模を誇る公立病院だ。さる2013年3月14日、海匝地区の地域医療連携を考えるシンポジウム「千葉県海匝地区 地域医療連携懇談会」が同病院で開催された。勤務医、開業医、ケアマネジャー、保健師といった当事者が、地域医療のあり方についてどう考えているのか。それぞれの声を紹介する。

旭中央病院の救急の現場から

旭中央病院救急救命科 伊藤史生医師

 最初に講演を行ったのは、旭中央病院救急救命科の伊藤史生医師である。「病院勤務医師の立場から」というテーマで、データを紹介しながら、旭中央病院の救急医療体制の現状を説明した。

 まず、伊藤氏が示したのが「164」と「17」いう数字だ。これは、前者が1日に同病院の救急外来を利用する患者の数、そして後者が、その中で入院する患者の数である。成田赤十字病院の場合、この数は前者が66人で後者が12人であることから、旭中央病院より入院する救急患者の割合が高いことになる。

 つまり、伊藤氏によれば同病院に症状の軽度な患者が多く受診していることの現れだということになる。ただし、これは不要不急の場合でも救急外来を利用するいわゆる「コンビニ受診」とは言えないと伊藤氏は付言した。むしろ、海匝地域に初期救急体制が築かれておらず、かつ、他の病院の受け入れ能力が落ちてきたために、このような状況になっているというわけだ。

 続いて紹介したのが「59,905」という数字。これは、旭中央病院が受け入れている1年間の救急受診者数で、11年前は44,338人。つまり、高齢化などで地域の人口は減っているにもかかわらず、救急受診者数の数は逆に増えているということ。実際、80歳以上の患者の比率が年々大きくなっており、高齢化で病院の負担が増えているのが現状だという。

 伊藤氏によると、同病院の病床稼働率は95%。つまり、残りの5%をやりくりして救急患者を入院させているのが実態だ。病院側も、入院患者をいかに早く帰して新たな患者を受け入れるかにあくせくしているという。がん患者に対する手厚いターミナルケアなども非常に難しい。そこで伊藤氏は、病院でできないのであれば、地域でそういったことを行うということを考えていると語った。

 現在、旭市民の約7割が病院で亡くなっている。また、旭中央病院で亡くなる旭市民の患者のうち、半分以上が悪性腫瘍(がん)だという。悪性腫瘍の患者は、最後にターミナルケアを受けている人がほとんど。一方、現在、同病院が行っている訪問看護での在宅看取りは年7件にとどまっているが、ここに力を入れ、病院でターミナルケアを受けている患者のうち、できれば2分の1、無理なら3分の1でも在宅ケアにできればと伊藤氏は語った。

 地域の医療資源は不足しているため、地域での医療をもっと充実させなければいけない。そのために、勤務医も病院外で診療したり、福祉施設などと連携を取ったりしたい。そういったことに対する協力を呼びかけ、伊藤氏は講演を締めくくった。

旭市民の約7割が病院で亡くなっている。(クリックすると拡大します)