地域医療ニュース

千葉市の医療について考える連続シンポジウム第2回
「千葉市の医療の“これから”を考えよう ?超高齢社会を乗り切るために?」が開催

2013. 04.04   文/梅方久仁子

医療者と患者の両方で意識改革が必要

千葉市立海浜病院消化器外科医師・緩和ケアサポートチーム 
塩原 正之氏

 次に塩原氏が、病院医師の立場から在宅医療について述べた。
 海浜病院には緩和ケア病棟がないので、緩和ケアチームがある。チームにはさまざまな専門の医師、看護師、薬剤師など多職種が加わっていて、入院中の患者さんからの相談を受ける。緩和ケアチームが約3年間で相談を受けた112例のうち、死亡が108例で、その内在宅で亡くなったのは6例のみ。大岩先生の診療所に依頼した68例は、死亡64例のうち59例が在宅で満足して亡くなられた。
 今は医療者と患者の両方で在宅緩和ケアについて情報不足で、双方の意識改革が必要だ。病院で最期を迎えたいという人には希望どおりのケアをするが、在宅緩和ケアにはいろいろな可能性がある。適切なサポートがあれば、一番望ましいケアだと思う。
 塩原氏の発表後、コーディネーターの高林氏から、なかなか在宅緩和ケアが進まない原因について問題提起があった。大岩氏からは「受け皿の問題をひとまずおくと、患者さんに残された時間は少ないので、完璧な体制を整えようとすると間に合わなくなる。まずはできるだけ早く帰宅して、その後に出てきた問題を解決していくような発想の転換が必要」、塩原氏からは「何年も付き合っていると医師と患者の結びつきが強くなり、最後まで診たい、診てほしいという気持ちが生まれると思う」といった意見が出された。

地域のつながりが大切

東千葉ハッピータウンの会代表 
下坂 貞夫氏

 次に下坂氏から、地域活動に取り組む東千葉ハッピータウンの会について説明があった。
 高齢化の波が押し寄せる中、地域の住みやすさが人生を楽しく生きることに直結すると考えて、10年前に東千葉ハッピータウンの会を立ちあげた。地域には、さまざまな技術、知識、経験を持つ人が暮らしている。会員は自分の得意な分野を申告して、支援し合う。親睦会や交流活動も行っている。健康の重要性を感じて、2010年4月には、会の1部門として「まちと医療を考える集い」を立ちあげた。医療、健康、介護などについて地域の専門家による学習や実習を含む講座を企画しているとのことだった。
 下坂氏の発表後、高林氏から「独居高齢者が増えているが、介護する人間がいない場合に在宅療養はできるのか」という問題提起があった。塩原氏は、「在宅医療には介護力が必要。さまざまな社会資源を使って支えるのが理想だが、現実的には難しい。介護者がいない人を病院が引き受けるという可能性もある」、下坂氏は「将来独居になることを考えて会員になる人は多い。孤立者が増えると、地域が殺伐とする。その前に、みなさんとつながりを作っていくのが大切」と語る。大岩氏からは、「家族による介護は大切だが、必須ではない。訪問看護やホームヘルパーで対応できる。介護力で一番大切なのは、本人だ。本人が、どうしたいかをきちっと決められれば大丈夫」との意見が表明された。

東千葉ハッピータウンの会の取り組み。(クリックすると拡大します)