地域住民からのメッセージ

自治体病院のオーナーは「住民」だという自覚、
保険制度も「みんなの財産」だという意識が必要

2011.11.16   文/梅方久仁子

伊関友伸 氏
城西大学経営学部マネジメント総合学科教授 伊関友伸 氏

 『まちの病院がなくなる!? 地域医療の崩壊と再生』や『地域医療 ?再生への処方箋?』などの著書があり、現場を通じて地域医療の研究を長く続けている城西大学経営学部の伊関友伸教授に、いまの医師不足の原因から今後の医療危機への対処方法をうかがった。

医師不足のきっかけは
新臨床研修制度

いまの医師不足は、なぜ起こったのでしょうか。医師の研修制度が原因だとよく言われているようですが。

伊関 確かに平成16年に医師の臨床研修制度が変更されたことが、医師不足のきっかけになりました。

 新しい研修制度自体は、医師免許を取ったばかりの医師が一通り医師としての経験を積むという意味があります。以前は医学部を卒業して医師免許を取るとすぐに大学の医局に所属していました。そうすると、耳鼻科の医局に行った人は耳鼻科だけ、眼科の医局に行った人は眼科だけしか経験しないという問題がありました。

 新制度では、医師免許取得後にさまざまな科について医師として最低限の技術を学ぶため、とりあえず2年間は研修という形で各科を回ることになりました。その一方、これまで大学の医局に所属していた医師免許を取ったばかりの医師1万5000人(1年間7500人×2年間分)は、研修期間中の2年間は戦力にならないことになりました。

 それから、新制度ではマッチングという形で医師が研修先の病院を自由に選べるようになりました。多くの研修医が出身大学の医局を離れ、都市部の有力な研修病院で研修をすることになりました。そのことが契機となり、それまで大学の医局に属していた若手・中堅の医師も医局を離れて勤務先を自由に選ぶ傾向が強くなりました。その結果、公立病院などに医師を派遣していた大学医局には所属する医師の数が減り、地域の病院に派遣をしていた医師を引き揚げざるを得なくなりました。医師が引き揚げられた病院では残った医師が一生懸命医療を行っていましたが医師の絶対数が足りず、疲れ切って大量に辞めるという動きが起きました。病院によってはすべての医師が辞めてしまって、診療できなくなるところも出てきました。