2021.01.22
てんかんとは
てんかんは、脳の神経細胞に突然発生する異常な電気的興奮により、発作を繰り返す慢性的な脳の病気です。
患者数は1000人のうち5~10人、日本全体で60~100万人と比較的多く、年齢、性別を問わずだれにでも発病する可能性があります。発症年齢は、3歳以下が最も多く、80%は18歳以前に発病するといわれています。
発作の症状は、患者ごとにほぼ一定で、同じ発作が繰り返し起こることが特徴です。発作終了後は基本的には元の状態に回復しますが、神経機能に影響を及ぼす場合もあります。
てんかんの原因と症状
てんかんの原因は人によってさまざまですが、大きく分けると「症候性てんかん」と「特発性てんかん」の2つがあります。
「症候性てんかん」は、脳腫瘍や脳梗塞など、原因となる脳の異常との関連が推定できるてんかんです。生まれたときの仮死状態や低酸素などが原因になる場合もあります。「特発性てんかん」は、さまざまな検査をしても異常が見つからない原因不明のてんかんです。
てんかんが引き起こす発作の症状は、大脳の電気的興奮がはじめに発生する場所によってさまざまで、脳の一部から始まる「焦点発作」と、脳全体に発生し意識がなくなる「全般発作」に大きく分けられます。
焦点発作 | 全般発作 | |
---|---|---|
しくみ | 脳の一部から始まる | はじめから脳全体がまきこまれる |
特徴 | ・脳のどの部分から生じるかによってはじめの症状が決まる ・意識が保たれるもの、意識が障害されるもの、二次的に全般発作に進展するものがある |
はじめから意識がなくなり、身体の左右同時に症状がでる |
症状の例 | ・運動機能の障害 手足や顔がつっぱる、ねじれる、ガクガクとけいれんする、体全体が片方に引かれる等 ・視覚や聴覚の異常 輝く点や光が見える、音が響く、耳が聞こえにくい等 ・自律神経の異常 頭痛や吐き気を催す等 ・自動症発作 歩き回る、口をもぐもぐと動かす、無意味な動作を続ける等 ・動作停止発作 一点を見つめ動作が止まる |
・強直間代発作 全身を硬直させ、直後にガクガクと全身がけいれんする ・脱力発作 全身の力が瞬時になくなって、崩れるように倒れる ・欠神発作 数秒から30秒突然意識が消失し、すばやく回復する ・ミオクロニー発作 全身あるいは手足など一部分の筋肉が一瞬ピクッと収縮する |
ILAE2017年発作型分類より作成
【てんかん重積状態】
発作がある程度の長さ以上続く状態、または短い発作の場合でも繰り返し起こってその間の意識がない状態をてんかん重積状態と呼びます。重積状態が長時間に及ぶと生命に危険が及ぶ可能性があり、5~10分間以上発作が続く場合は速やかな治療の開始が必要です。
てんかんの診断と治療
現在の医療では、適切な治療を受ければ70~80%の人が発作をコントロールでき、普通の社会生活を送ることができます。しかし、2割程度の人は、抗てんかん薬を飲んでも十分に発作をコントロールすることができず、「難冶性てんかん」または「薬剤抵抗性てんかん」として複数の抗てんかん薬の調整や手術が必要となる場合もあります。
てんかんの診断では、医師に発作の様子を詳しく説明する必要があります。発作が始まると意識障害が起きる発作もあり、自分で発作の状態や状況を話すことができない場合もあります。発作の状況を知る家族や教師、職場の人と一緒に診察に行き、発作の様子(意識は保たれていたか、体のどの部分にどのような動きがあったか、どのくらいの時間症状が続いたのか、等)を正確に伝えてもらいましょう。てんかんの発作は同じ症状を繰り返すことで診断されるため、1回の発作のみでは診断することが難しいとされていますが、脳波検査の結果や病状により1回の発作でもてんかんと診断される場合もあります。
一度診断を受けると長期的な治療が必要になります。病状を理解している主治医とよく連携を取り治療していきましょう。
意識がなくなったり、身体の自由が利かなくなったりするてんかん発作は、社会生活上のハンディキャップとなるだけでなく、交通事故などの二次的な被害を引き起こす危険もあります。自己判断は避け、専門医の診察を受け、早期の治療を心がけてください。また、てんかんと診断された場合に受けられる社会福祉制度も多数あります。お困りのことがある場合には、専門の医療機関にご相談ください。