ビタミンA豊富なうなぎ 骨粗しょう症の予防にも
夏の土用の丑(うし)の日にうなぎを食べる習慣はいつごろからでしょうか。諸説ありますが、その中で有名なのは、江戸時代の学者、平賀源内が知り合いのうなぎ屋に頼まれて「本日は土用丑の日」と書いたものを店先に張りだしたために、土用丑の日にうなぎを食べる習慣が広まったという説です。しかし、うなぎの記述は万葉集にもでており、奈良時代から「夏バテにはうなぎ」の説はあったようてす。
うなぎの本当の旬は、1番よくえさを食べて盛んに成長する秋なのですが、夏のうなぎも栄養価はさほど変わりはないようです。うなぎの栄養面での特徴はまずビタミンAが多いことです。ピーマンやかぼちゃと比較して10~30倍以上、いわしに比べて1000倍以上の5000IU(国際単位)(可食部100グラムあたり)含まれています。ビタミンAの1日必要量は成人男子で2000IU、女子1800IUとされていますからいかに多いかわかると思います。ビタミンAは脂溶性で油と一緒にとると吸収されやすくなりますが、うなぎには脂質が豊富に含まれているので効率よくビタミンAが吸収できます。若い女性がダイエットを始めたら、視力が落ちたとか、肌が乾燥してつやがない、お化粧ののりが悪いなどの症状がでることがあります。これらはビタミンAが欠乏したために起きる症状です。
うなぎにはビタミンAに加えてビタミンB1、D、Eなども豊富に含まれています。
うなぎには脂質も豊富ですが、その中で血液の凝固を抑えて血栓を防ぎ、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞の予防に役立つといわれる(エイコサペンタエン酸)という脂肪酸は、いわしの約90%、同じ血栓を作りにくくする作用をもつDHA(ドコサヘキサエン酸)はいわしの1.5倍含まれています。甲状腺から分泌され血液中のカルシウム濃度を調節する働きをするカルシトニンというホルモンがあります。最近話題の骨粗鬆(そしょう)症では血液中の内因性カルシトニン濃度が低くなることがわかっています。このカルシトニンがうなぎから抽出できるようになり骨粗鬆症の治療薬剤として注目されています。
以上のように栄養満点のうなぎでも、うな重、うな丼(どん)だけでは野菜が不足ですので、うなぎに不足するビタミンC、食物繊維たっぷりの野菜と組み合わせたメニューが望まれます。最後に「うなぎと梅干し」の食い合わせが悪いという科学的根拠はありません。
耳鼻咽喉科ほりうち医院 堀内和之

