健康トピックス

2021.08.06

子宮がん検診

子宮がん検診

子宮がんには発生場所により子宮頚がんと子宮体がんがあります。
図に示したように子宮の入り口(子宮頚部)にできるがんを子宮頚がん、子宮上部のふくらんだ部分(子宮体部)にできるがんを子宮体がんと言います。
自治体の検診では主に子宮頚がん検診が行われていて、子宮体がんは問診で医師が必要と認めた場合に子宮頚がん検診と合わせて行われています。
ただし、自治体により異なることがあるため、ご自身の住まわれている自治体に確認してください。

子宮の解剖

図1は女性の断面を右側から見たところです。
子宮や卵巣は体と比較して大分大きく描いて有ります。
実際の子宮は、すこし大きめのにわとりの卵ぐらい、卵巣はそら豆ぐらいの大きさです。
子宮は膀胱と直腸の間にあり、たいていは少し前に屈曲(前屈)して、子宮の上部(体部)は膀胱の上に乗った形になっています。
子宮が後方(直腸側)に屈曲している場合を子宮後屈といいます。
子宮の下部(膣部)は腟に露出しています。腟は筒状の器管で前は膀胱、後は直腸と接しています。
クリトリス、尿道口、腟前庭(腟の入り口)、肛門が一列に並び、小陰唇が両側から覆うかたちに成っています。

図2は女性性器の正面図です。子宮は筋繊維(平滑筋)で形成された臓器で洋梨のような形をしています。
内子宮口より下を子宮頚部、上を子宮体部と言います。
体部の内側は子宮内膜で覆われ、ホルモンの作用で増殖して妊娠に備えますが、妊娠しなかったときは脱落して新しい内膜に変わります。
これを月経(生理)と言います。

子宮頚がんについて

子宮頚がんは最近では若い女性の発症が増えており、20歳代後半から増加して30歳代後半が発症のピークとなっています。
子宮頚がんの原因のほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。性交経験のある女性の約80%の方が一度はHPVに感染するといわれています。感染してもほとんどの方は無症状のまま免疫の力で自然にHPVが排除されて発症することはありません。HPVが持続感染した一部の方が軽度異形成→中等度異形成→高度異形成→上皮内がん→子宮頚がん(浸潤がん)と進行します。
早期には症状がほとんどなく進行してくるとおりものの異常や不正出血、性交時の出血、下腹部痛などの症状があらわれます。子宮頚がんは早期に発見すれば比較的治療しやすく予後のよいがんですが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が重要です。
また、前述のように子宮頚がんのほとんどはHPV感染が原因です。感染予防のためにHPVワクチンの接種が大切で感染率とともに前がん病変の頻度が接種していない人に比べて減少することも明らかになっています。WHOは性交渉を経験する前の接種を推奨していて、日本でも小学校6年生から高校1年生相当の年齢の女子は公費助成の対象となっています。

子宮体がんについて

子宮体がんは40歳ごろから増加して、50歳から60歳代でピークを迎えます。子宮体部の内側にある子宮内膜という組織から発生するので子宮内膜がんとも呼ばれています。
原因としてエストロゲンという女性ホルモンが関わっていて、エストロゲンの刺激が長期間続くことが原因で発生します。危険因子として出産経験がない、肥満、月経不順、乳がん治療薬(タモキシフェン)、卵胞ホルモン製剤だけのホルモン療法を受けている方などがあげられます。また、エストロゲンとは関係なく、がん関連遺伝子の異常に伴って発生する場合もあります。高血圧、糖尿病、近親者に乳がん・大腸がんを患った方がいることなども危険因子として知られています。
不正性器出血が90%の方にみられます。不正性器出血(褐色のおりもの程度のこともあります)が長く続く場合や、閉経後に出血がある場合はすぐに婦人科を受診してください。

子宮がん検診について

各自治体が行っている子宮がん検診は、主に子宮頚がんをターゲットとしています。子宮頚がん検診は20歳以上の方に2年間隔で行われています。子宮体がん検診は問診により医師が必要と認めた方(本人の同意が必要)に頚がん検診と併せて行われています。ただし自治体により異なることもありますので詳細はご自身の住んでいる自治体にお問い合わせ下さい。また、職場の検診や人間ドックなどでも受けることができます。
子宮がん検診は基本的に症状がない人に行うものです。不正出血、おりものの異常、下腹痛や月経不順その他の気になる症状がある方は検診ではなく婦人科を受診しましょう。

検診の実際
受診時に問診票の記入を行います。検査をする際にとても参考となりますので記入漏れのないようにしてください。
問診ののち、下着をとって診察台に上がり検診を行います。内診は、左手の指を腟の中に入れ、右手でお腹を押して子宮や卵巣の大きさを確認します。子宮頚がん検診はクスコという器具を腟内に入れて子宮頚部を確認して専用のヘラやブラシなどでこすって細胞を採取し、採取した細胞を専門家が顕微鏡で調べます。
子宮体がん検診は子宮内に細い器具を挿入し細胞を採取するので、子宮頚がん検診よりも痛みが強いことがあります。高齢の方や出産経験のない方では子宮口が狭くなっていたり、あるいは閉じてしまっていたりして検査ができない場合もあります。

検診の結果について

従来、子宮頚がん検診で行われる細胞診の結果はクラス(Class)分類で表されていましたが、細胞の異常の程度をより正確に表しているベセスダシステムという分類が現在使用されています。下記にクラス分類とベセスダシステムの比較を示しました。

子宮頚がん検診の結果について

ベセスダシステムでNILM以外の場合は精密検査が行われます。要精密検査の方は必ず指示通りに検査を受けて下さい。

精密検査について
①HPV検査

子宮頚がんの原因であるHPVに感染しているかどうかを調べる検査で、子宮頚がん検診と同様に子宮の入り口の細胞をブラシで採って検査します。HPV検査で陽性の場合、コルポスコープや組織診を行います。

②コルポスコープ・組織診

子宮頚がんの精密検査はコルポスコープという拡大鏡で子宮の入り口の状態を調べて、病変部分をつまみ取って組織診を行います。
子宮体がんでは専用の器具を子宮内に入れて組織を採取します。

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