医療現場からの提言

2018年

vol.06 2回の予防接種徹底を

麻疹の現状を教えてください

原木:

日本は、2015年にWHOから麻疹排除宣言を受けた。しかし、その後も海外、特に東南アジアの流行国からの輸入が相次ぎ、流行が繰り返されている。
今年3月に麻疹に罹患(りかん)した旅行者が沖縄に来県。診断がつくまでの3日間公共交通機関を利用して観光した。その後、当該患者と接触のある人や空間を共有した人が次々に発症、さらに、名古屋や東京、福岡などに飛び火した。1人の患者から、100人を超える患者が全国に拡散し、乳児の患者も発生してしまった。

麻疹とは、どんな病気なのですか

原木:

麻疹の感染力は非常に強く、インフルエンザの10倍近いといわれている。数分間、同室しただけで感染する可能性がある。
麻疹は千人に1人は死亡する可能性のある重篤な感染症である。10日程度の潜伏期のあとに発熱、カタル症状(咳、鼻水、眼やになど)、発疹などの症状が出る。肺炎、脳炎が合併症として恐れられている。また、感染後数年を経た後に発症する亜急性硬化性全脳炎という非常に重篤な合併症もある。

有効な治療法はありますか

原木:

麻疹には特別な治療法はなく、予防接種が身を守る唯一の手段。麻疹ワクチンは、1才(~2才未満)と就学前の1年間の2回が定期接種と定められている。今年度28歳になる方たちまでは2回接種の機会があったが(接種をうけているかどうかは別として)それ以上の年齢の方は、ワクチンを受けていないか1回のみの方が多いはず。近年の流行は成人が中心となっているため、行動範囲が広く感染が広がりやすかったり、妊婦への感染が心配されたりと、社会的な影響が大きい。

流行を防ぐために、行政に希望することはありますか

原木:

免疫力の低いワクチン接種前の乳児、ワクチンを受けられない妊婦(と胎児)を守るためには、麻疹が流行しないように、周囲の人たちが麻疹ワクチンを2回受けることが重要になる。そのためには、全ての人が必要なワクチンが受けやすい体制(十分なワクチンの供給、費用の補助、接種機会の増加など)を行政が作ることが必要だ。

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